眼瞼痙攣

[No.46] 薬剤性眼瞼けいれんにご用心 まぶたのピクピクから始まり: 日刊ゲンダイ記事から

薬剤性眼瞼けいれんにご用心 まぶたのピクピクから始まり…

日刊ゲンダイヘルスケア 公開日:2021年06月11日

新型コロナの影響で気持ちがふさぐなど、心が不安定になっている人も少なくないのではないか。だからこそ知っておくべき目の病気がある。睡眠薬、向精神薬、抗うつ薬、抗不安薬などの神経系に働く薬の服用で発症することがある「薬剤性眼瞼(がんけん)けいれん」だ。眼瞼けいれんの診断と治療の専門家で「清澤眼科医院」(東京・江東区)(現在は自由が丘清澤眼科 目黒区)の清澤源弘院長に聞いた。
「眼瞼けいれんは、両側のまぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)が持続的に収縮し、それが間をおいて繰り返す病気です。自分の意思で止められるものではありません。発症は、下まぶたのピクピク感から始まり、次第に広がって、症状が進むと自力では目を開けられず、実質的に失明状態になります。進行はゆっくりですが、自然に治ることはまれです。その原因は、大脳基底核にある運動抑制システムの機能障害と考えられています。これを本態性眼瞼けいれんと呼び、中高年の女性に多い病気です。ほかに、パーキンソン病など神経内科疾患に見られる症候性眼瞼けいれん、向精神薬や抗不安薬の常用による薬物性眼瞼けいれんがあります」

この中でも最近目立つのは若い人に多い薬物性眼瞼けいれんで、次のようなケースがあったという。
20代前半の歯学部に通う女子学生が「まぶたが勝手にぴくぴくして光がまぶしい。どうにかならないか」と訴え来院した。さっそく、一般的な眼科検診を行いそのほかの病態の可能性を排除した後、眼瞼けいれんを疑い、「眼瞼けいれん調査質問表」による問診と「随意瞬目テスト」を行った。
「質問表」は、日本の眼瞼けいれんの診断と治療の第一人者で日本神経眼科学会前理事長の若倉雅登医師が開発したもので、10項目中、該当項目1~2個で「疑い」、3個以上で「眼瞼けいれん」とされる。
「瞬目テスト」は、まばたきを1秒間に2回程度10秒間リズミカルに行う「軽瞬」、可能な限り速く10秒間行う「速瞬」、ギューッと目をつぶった後にパッと目を開ける動作を10回繰り返す「強瞬」をしてもらい、それを4段階で評価し、眼瞼けいれんか否かを判定する。

「この女子学生は質問表で5個以上に該当していて、瞬目テストは『軽瞬』『速瞬』がうまくできませんでした。目を開けるよりつぶっている方が楽と言い、光を見るとまぶしいとも話していました」
原因薬を止めるのは難しい
眼瞼けいれんの患者はドライアイを併発していることが多い。「シルマーテスト」(試験紙を下まぶたの両端に挟んで涙の量を計測するテスト)をすると、やはりこの女子学生はドライアイも併発していたことがわかった。
「話を聞くと、勉強が忙しくてよく眠れず、4年ほど睡眠薬を飲んでいたということでした。眼瞼けいれんは、『片側顔面けいれん』やけいれん箇所が限られていて瞬目に異常のない『眼瞼ミオキミア』『眼瞼下垂』『パーキンソン病』などとの鑑別が必要です。それを行ったうえでこの女子学生の患者さんは『ドライアイ合併の薬剤性眼瞼けいれん』と診断しました」

残念ながら眼瞼けいれんに根治療法はなく、対症療法で症状を抑えつつ、基本的に一生付き合っていくことになる。
ただし、薬剤性眼瞼けいれんの場合は、その原因となる薬剤を中止すれば治る場合も多い。しかし、薬の中断は症状を悪化させる可能性があるうえ、離脱症状(睡眠障害、不安、筋肉痛、振戦、頭痛、嘔気、体重減少、発汗、霧視、変視症、感覚過敏、感覚鈍麻、動揺感など)が起こる可能性があり、原因薬の減量・中止が困難なことも多い。

「そのため、原因薬を中止または減量する場合には、その薬を処方した医師と協力したうえで、慎重に行うことが必要になります。ただ、この女子学生は“勉強のために睡眠薬を今すぐに手放すことはできない”ということもあり、服薬治療や手術でなく、即効性があり、3~4カ月の効果が継続するボツリヌスを眼瞼に注射する治療法を選択しました」

ドライアイについては、目の中の涙の排出口である涙点にプラグを差し込むことで涙を目の表面にためてドライアイを治療・軽減するやり方を採用した。結果、その女子学生の症状は劇的に改善したという。最近は新型コロナの影響で「夜よく眠れない」「将来が不安で落ち着かない」などという人が増え、神経に働く薬を使う人も目立つ。あなたは大丈夫?

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