神経眼科

[No.1623] 日本における進行性多巣性白質脳症の全国検査室サーベイランス:2011~2020年度:新論文紹介

清澤のコメント:進行性多巣性白質脳症(PML)は、脳の白質(leuko-)が複数の場所(multifocal)で進行性の損傷(-pathy)または炎症を起こす、稀でしばしば致命的なウイルス性疾患です。これは、通常免疫系によって制御されているJCウイルスによって引き起こされます。このウイルスは、免疫力が低下した状況で再活性化し、脳内に多発性の病巣を引き起こす病気です。PMLの臨床症状は、病名である「多巣性」を反映して多彩ですが、よく見られる初発症状としては片麻痺・四肢麻痺・認知機能障害・失語・視覚異常などがあります。その後、初発症状の増悪とともに四肢麻痺・構音障害・嚥下障害・不随意運動・脳神経麻痺・失語などが加わり、無動無言状態(寝たきりの状態)に至ります。私もその昔、留学中に強い半盲を起こしたこの疾患の症例報告をしたことが有り。病名を聞いてその時のことを思い出しました。

(別論文からの図です)

Positron emission tomography in a patient with progressive multifocal leukoencephalopathy.

Kiyosawa M, Bosley TMAlavi A,、Gupta N, Rhodes CH、,Chawluk J、,Kushner M, Savino PJ, Sergott RC, Schatz NJ Neurology, 01 Dec 1988, 38(12):1864-1867
DOI: 10.1212/wnl.38.12.1864 

  ―――今回の論文は―――

Nationwide Laboratory Surveillance of Progressive Multifocal Leukoencephalopathy in Japan: Fiscal Years 2011–2020

April 2023 Viruses 15(4):968

DOI: 10.3390/v15040968

進行性多巣性白質脳症 (PML) は、JC ウイルス (JCV) によって引き起こされる壊滅的な脱髄疾患であり、主に細胞性免疫障害のある患者に影響を及ぼします。PML は、いくつかの例外を除いて報告できない疾患であり、全国的なサーベイランスを困難にしています。日本では、脳脊髄液 (CSF) 中の JCV のポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 検査が、PML 診断をサポートするために国立感染症研究所で行われています。日本におけるPMLの全体像を明らかにするために、10年間(2011~2020年度)にわたるCSF-JCV検査時に提供された患者データを分析しました。新たに PML が疑われる 1,537 例の PCR 検査が実施され、288 例 (18.7%) の患者が CSF-JCV 陽性でした。テストされたすべての個人に関する臨床情報の分析により、地理的分布を含む PML 症例の特徴が明らかになりました。年齢と性別のパターン、および基礎疾患の種類ごとの研究対象者の CSF-JCV 陽性率。研究期間の最後の 5 年間、超高感度 PCR 検査を利用した監視システムと PML に対する広範な臨床的関心により、疾患の初期段階で CSF-JCV が検出されました。この研究の結果は、PML の診断だけでなく、PML の素因となる状態の治療にも有益な情報を提供します。

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