最近世界保健機構で正式な病名に認定された(→リンク)視界砂嵐症候群(ビジュアルスノウ症候群VSS)の治療に関する情報がビジュアルスノウイニシアチブのページに新たに掲載されました。その要点を清澤が1500文字にまとめました。現在のところ、確立された治療薬はありませんが、清澤はこの疾患と診断される患者さんに対し、「この疾患に該当しますが、過度に心配する必要はありません」と伝え、経過観察とする場合が多いです。
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ビジュアルスノウ症候群(VSS)治療の現状
視覚雪症候群(VSS)は、視覚処理に関与する神経経路の複雑な障害と考えられており、その効果的な治療法の確立には至っていません。現在までにさまざまな薬剤が試験的に使用されてきましたが、効果は限定的であり、標準治療法は存在しません。
主な治療薬の概要
- ラモトリギン
抗けいれん薬として使用され、一部の患者に限られた改善をもたらしましたが、全体的な有効性は低く、副作用や症状の悪化が報告されています。 - トピラメート
片頭痛予防薬で、一部の患者に効果が見られる一方、副作用が深刻で治療の継続が難しい場合が多いです。 - ベンゾジアゼピン
一時的な症状緩和が得られる場合もありますが、依存性や耐性のリスクがあり、長期使用には適しません。 - プロプラノロール
β遮断薬で、片頭痛予防に使用されますが、VSSの症状にはほとんど効果がないとされています。 - ガバペンチンとプレガバリン
神経障害性疼痛の治療に使われますが、VSSに対する効果は限定的で、副作用のリスクが高いです。 - ノルトリプチリン
三環系抗うつ薬として使用され、一部の患者に効果がありましたが、効果には個人差があります。
その他の治療選択肢
- オナボツリヌス毒素A(ボトックス)
慢性片頭痛の治療に使用されますが、VSSへの有効性は明確ではありません。 - フルナリジンとシンナリジン
カルシウムチャネル遮断薬で、一部の患者に症状緩和が見られることがあります。 - マグネシウムサプリメント
神経系の健康に役立つ可能性があるとして推奨されていますが、効果は限定的です。
治療薬開発の課題
VSSは、脳内ネットワークの複雑な障害と関連しており、特に視覚処理や神経伝達物質(グルタミン酸、セロトニン)の調節異常が影響を与えていると考えられています。現在の薬剤は、こうした根本的な問題に対処するものではなく、副作用のリスクも大きいことから、さらなる研究が必要です。
また、薬剤がVSSの症状を悪化させる場合や、新たな視覚障害を引き起こすケースも報告されており、治療薬の開発には慎重なアプローチが求められます。
継続的な研究と今後の方向性
VSSの研究を支援する団体「Visual Snow Initiative(VSI)」は、薬理学的および非侵襲的な治療法の研究を推進しています。研究者たちは、VSSの特有のバイオマーカーを明らかにし、より効果的で安全な治療法の開発を目指しています。
患者へのアドバイス
VSSの治療は、個別化された学際的なアプローチが必要です。症状管理においては、資格のある医療専門家に相談し、個々の病歴や症状に基づいた治療計画を立てることが重要です。VSSの症状が日常生活に大きな影響を与える場合は、医師や専門家に早めに相談することが推奨されます。
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