眼科医療経済等

[No.2709] 新型コロナウイルス大流行前後の 眼科医療推移:千原悦夫ほか

新型コロナウイルス大流行前後の 眼科医療推移:千原悦夫ほか

新型コロナウイルス大流行前後の 眼科医療推移 千原 悦夫・千原 智之・大音壮太郎という記事が日本の眼科6号に発表されている。千原悦男先生は私より数年年長であったと記憶するが、京都大学の助教授を務められた緑内障の大家であり、現在に至るまで意義深い社会医学的な論説を発表されている。此の論説を見ると、眼科治療の趨勢も単に網膜硝子体手術ばかりが全盛なわけではなく、大きく変遷していることが感じられた。そこでこの論文の要点をまとめてこのブログに採録してみる。 著者は、厚生労働省の社会医療診療行為別統計を用い, 2020 年の新型コロナウイルス流行による眼科医療費及び手術数の減少と,各眼科専門領域における回復について調べた。

 要約: 新型コロナウイルス大流行前後の眼科医療推移

新型コロナウイルスの大流行により、2020年の眼科医療費と手術数が大幅に減少したが、その後回復が見られたものの、すべての専門分野が均等に回復したわけではない。特に斜視と白内障手術の減少が顕著だった。2022年には抗VEGF剤の注射数や内反症、眼瞼下垂、緑内障手術数は増加したが、網膜凝固術は依然として2019年の水準を回復していない。

眼科医療の回復には、新型コロナウイルスの影響だけでなく、医学の進歩や医療制度の変更も関与している。特に、20206月には眼科の総医療費が24.7%減少し、斜視手術が41.2%、白内障手術が36.1%減少した。2022年には、多くの手術が2019年の水準に回復したが、強膜・角膜手術と網膜凝固術は依然として回復していない。

一方、緑内障手術は急激に増加し、2022年には2019年比40.2%増加した。特に流出路手術系が増え、トラベクレクトミーは横ばいであった。これらの手術の増加は、Needlingなどの新しい手術法が保険医療の対象に加わったことが一因と考えられる。

また、網膜硝子体手術は大流行前から減少傾向にあり、特に抗VEGF剤の使用が増加したことで治療方法が変化した。糖尿病治療薬の進歩も手術数の減少に寄与している。

眼瞼下垂や内反症手術の急増は、美容・整容への関心の高まりを反映している。全体的に、眼科医療は大流行による一時的な影響を受けたが、その後の回復は専門分野ごとに異なり、医療技術の進歩や制度の変更も大きく影響している。

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