清澤のコメント:「米国の農村部における眼科専門医の不足」が今月の米国医学会雑誌眼科編の招待コメントで論じられています。日本でも眼科医の都市偏在は同様に問題視されますが、米国は国土も広く、眼科のサブスペシャリティー医療の受診困難な地域は多いようです。61%の郡(カウンティー)には眼科医が存在せず、24%の郡では眼科医も検眼医(オプトメトリスト)もいないとしています。末尾に日本のシーリング制度を追記し説明します。
ーーーーーーーー
米国の地方における眼科専門医の不足
ソフィア・Y・ワン医学博士、理学修士
JAMA Ophthalmol. 2025年1月2日オンライン公開。doi:10.1001/jamaophthalmol.2024.5704
地方における眼科専門医の不足:米国では農村部人口が全体の20%を占める一方、医師の10%未満が農村部で診療を行っています。この格差は眼科でも顕著で、61%の郡に眼科医が存在せず、24%の郡では眼科医も検眼医もいません。そのため、11.7%のアメリカ人が眼科医のいない地域に住んでいます。特に農村部では高齢者や低所得者の割合が高く、加齢性疾患(緑内障や黄斑変性症)や糖尿病性網膜症などの慢性疾患への対応が困難となり、健康格差が拡大する懸念があります。
Ahmedらの研究:本号では、Ahmedらがメディケア請求データを用いて眼科外科専門医の地理的分布を調査しました。眼科専門外科(角膜、緑内障、網膜など)の患者の13~18%が農村部に居住している一方、農村部で診療する眼科専門医はわずか4~8%でした。また、新卒医師ほど地方勤務の割合が低い傾向が明らかになり、地方の眼科医療需要と供給のギャップが指摘されています。
解決策の模索:地方の医師不足解消には多方面からのアプローチが必要です。医師の地方開業を促す政策として、ローン返済や奨学金を提供するプログラムがありますが、眼科は対象外となることが多いのが現状です。一方、地方出身の医師や地方医療プログラム卒業生が地方で診療を継続する可能性が高いことが示されており、地方出身の眼科専門医の育成が期待されています。さらに、遠隔医療や移動診療所の活用も検討されています。遠隔医療は慢性疾患の一部を支援できますが、眼科検査や処置には限界があり、すべての需要を満たすことは困難です。特に硝子体内注射などの定期的な治療を必要とする患者に対しては、現地での対応が不可欠です。
結論:農村部の眼科専門医不足への対応は、医療アクセスと公平性の改善に不可欠です。医療政策、医学教育、コミュニティの取り組みを組み合わせた戦略が求められます。今後、持続可能で革新的な解決策の追求が必要です。
ーーーー
コメント