不満のはけ口?医療者がSNS「不適切投稿」の背景
千葉大学で看護師が院内の問題点をSNSに投稿したことが重大な問題になっています。このことに対して上 昌広(医療ガバナンス研究所理事長)さんが東洋経済オンラインに2025年2月7日記事を書いて居ます。医療関係者が患者の医療情報をSNSに投稿することが問題視されていますが、病院内で投薬などが守られていなかったなどの告発内容にも別の問題がありそうです。その記事の概要をまとめました。
―――――――
不満のはけ口?医療者がSNS「不適切投稿」の背景
海外では「手術を生中継した」医師が免許剥奪例も
千葉大学医学部附属病院の看護師と見られる人物が、SNS「X(旧Twitter)」上で、「インシデントを隠蔽」「薬を飲ませたふりをして捨てた」「医師への暴言」などの投稿を行い、波紋が広がっている。同病院は当該職員を自宅待機とし、調査を開始したが、この問題は「氷山の一角」との見方も強い。
SNS上での医療従事者の不適切行動は日本に限らない。アメリカ・テキサス州では看護師が麻疹患者の情報を投稿し、HIPAA違反で解雇。TikTokで手術中の様子をライブ配信していた医師は、オハイオ州で免許を剥奪された。日本でも、2005~2014年にかけてインターネット上のモラルハザードが20例報告されており、守秘義務違反、誹謗中傷、悪ふざけなどが含まれる。
このような問題行動の背景には、医療現場の過酷な労働環境がある。医師の働き方改革が進む一方で、看護師の勤務環境には依然として多くの負担が残る。例えば、日本看護協会の調査では、月平均5時間を超える残業が報告されているが、別の研究では1日2時間の超過勤務が常態化していることが明らかにされた。
さらに、7割以上の看護師がサービス残業を経験し、8割近くが疲労感を訴え、離職意向を持っている。86%が過去3年間に医療ミスやニアミスを経験しており、これに関わるインシデント報告も精神的な負担となっている。
「インシデント報告」はミスを防ぐための重要な仕組みだが、医師との関係や職場文化によっては、「犯人探し」として捉えられることもある。これが看護師の心理的圧迫となり、SNSという形での“吐き出し”につながることもある。
今後の対策として筆者は、SNS上の暴露が一種の抑止力になりうるとしつつも、根本的な改善が必要と強調する。海外では、アメリカ看護師認証センターによる「マグネット認証」など、看護師の職場環境を評価する仕組みがあり、これを取得した病院では離職率が低い傾向にある。
また、オーストラリア・ビクトリア州では法的に「1人の看護師が受け持つ患者数(1:4)」が定められ、労働環境の改善とケアの質向上が図られている。対して日本では1:7~1:13とされ、国際的には厳しい条件といえる。
最後に筆者は、今回のSNS問題を通じて、看護師の労働問題や医療体制の限界に光が当たることを期待し、社会全体での議論と改善の必要性を訴えている。
コメント