目黒区眼科医会に参加して:地域の眼科医療を考える
5月10日、私は目黒区内の眼科医が集まる「目黒区眼科医会」に参加してきました。参加者は15名ほどでしたが、このような会合に定期的に出席するクリニックもあれば、参加されない施設もあり、地域内での温度差を感じることもあります。
当日は、地域の眼科事情や制度の最新情報が共有され、多岐にわたる話題が議論されました。以下に、市民の皆さまにも関係の深い内容をわかりやすくご紹介します。
- 目黒区における眼科医の配置と現状
全国的にみても、目黒区は眼科医の数が比較的多い地域とされています。厚労省の過去の統計によれば、日本全体では人口10万人あたり約10.7人の眼科医がおり、1人の眼科医が約9,300人の患者をカバーしている計算になります。
目黒区の人口は約28万8千人、高齢化率も19.5%と高く、眼科受診のニーズは年々増加しています。一方で、診療所の数は全国平均の約1.7倍であり、医療体制は充実しているといえるでしょう。ただし、地域医療を支えるためには、単に数が足りているだけではなく、質の高い連携と継続的な情報共有が重要です。
- Tokyo Eye Festival(東京アイフェスティバル)
毎年10月、「目の愛護デー」に合わせて開催される「Tokyo Eye Festival」は、東京都と東京都眼科医会が共催する、目の健康啓発イベントです。今年は私も検査コーナーのスタッフとして当日お手伝いをする予定です。眼科検診や視覚障害への理解を深める展示など、どなたでも参加できる内容となっています。ぜひお気軽にご来場ください。
- 視能訓練士(ORT)の不足と今後の課題
眼科での精密な視力検査や斜視・弱視の診断には、視能訓練士(ORT)の存在が欠かせません。しかし東京都内でも、ORTの数は需要に追いついておらず、多くの医療機関が人材確保に苦慮しています。少子高齢化や医療の高度化に対応するには、教育機関の拡充や待遇の改善も今後の課題となりそうです。
- 専門医制度の改訂について
眼科を含む全ての診療科で、専門医制度の見直しが進められています。眼科専門医の資格を継続するためには、定期的な講習受講に加え、50症例以上の診療記録の提出が求められるようになっています。これは医療の質を保ち、倫理的な診療を行うための取り組みであり、私たち開業医も責任を持って取り組んでいます。
- 新卒医師の進路「チョクビ」と「チョクサン」について
最近、「チョクビ」「チョクサン」という言葉が話題にのぼりました。
- 「チョクビ(直ビ)」は、医学部卒業後すぐに美容外科や美容皮膚科などの自由診療に進む道。
- 「チョクサン(直産)」は、研修後すぐに産婦人科に進む道を指します。
いずれも、医師の自由な進路選択として尊重されるべきものですが、臨床経験の少なさによる安全性や質の懸念もあるため、指導体制の整備とキャリア支援の強化が重要とされています。なお、「チョクサン」の「サン」は「産婦人科」の略で、「産業医」ではなさそうです。
- 電子カルテと眼科医療のデジタル化
近年は「Dx(デジタルトランスフォーメーション)」が医療の現場でも推進されています。電子カルテの導入は利便性を高める一方で、導入・維持コストや画像データの取り扱いなど、眼科ならではの課題もあります。特に眼底写真やOCT画像の保存には高い性能が求められ、すべてのシステムが対応できるわけではありません。
そのため、年齢や診療規模によって、電子カルテを導入する施設と、紙カルテを維持している施設とに分かれているのが実情です。当院では、診療の質と効率性を考慮し、慎重にシステム選定を行っています。
地域の眼科医同士が顔を合わせ、情報を共有することで、目黒区の眼科医療は着実に支えられています。当院もその一端を担いながら、皆さまの目の健康を守るお手伝いを続けてまいります。気になる目の症状や、ご家族のことでお困りの際は、どうぞ遠慮なくご相談ください。
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