【米国HHSが医療人材を大幅削減――現場に混乱の波】
2025年4月、米国保健福祉省(HHS)の長官が、連邦保健機関における医療従事者の大幅な削減方針を発表し、全米の医療関係者に大きな波紋を広げています。この記事は、アメリカの医学総合誌JAMAによる報道です。
● どんな削減が行われるのか?
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保健福祉省(HHS)傘下の複数機関(CDC、NIH、FDAなど)において、数千人規模の人員整理が予定されています。
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対象は、疫学、感染症対策、予防接種、環境保健、地域医療支援など多岐にわたる分野。
● 背景にある政策転換
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「効率化」と「予算のスリム化」が名目。
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一方で、コロナ禍を経て強化された公衆衛生体制が大きく後退するとの懸念も出ています。
● 現場からの声:「保証された混乱」
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医療現場や州の公衆衛生担当者からは、「削減される人材は、まさにパンデミック対応を支えた中心人物だった」との指摘。
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「現場では混乱が避けられない(guaranteed pandemonium)」という表現も報道されました。
● 特に懸念される影響
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感染症対応の遅れ(インフルエンザ、麻疹など)
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脆弱な地域の健康格差拡大
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公衆衛生研究の停滞
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災害医療体制の弱体化
【日本の眼科医としての私の視点】
日本でも近年、医療資源の最適化や診療報酬の抑制政策が進んでいますが、今回の米国のような急激な医療行政の縮小は、地域医療を大きく揺るがす可能性があります。眼科医療も例外ではなく、災害時の視覚リスク管理や、高齢化社会における慢性眼疾患対策には、専門人材と公的支援が欠かせません。しかし、医療保険料を含めた国家予算に対する医療福祉関係予算があまりに大きな割合を占める現状を考えると、公共の福祉を人質に取った医療サイドからの必要性の主張だけが正当化されるとも思えません。保険カバー領域の削減と私費診療の拡充などの世相を見据えた眼科医療機関の運営も必要かと思っています。
※原文:JAMA Medical News(2025年5月13日号)”Guaranteed Pandemonium as HHS Secretary Slashes Federal Health Workforce”(Jennifer Abbasi 他)
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