眼科医療経済等

[No.3723] 「脱・税理士スガワラくん」によるYouTube動画「病院の倒産が急増しています。」:動画紹介

清澤のコメント:わたくしもこのブログでしばしばお話ししていますが、現在の医療報酬と医療環境では開業医を含む多数の医療機関の存続はむつかしいです。美容外科などの私費診療に走る傾向もありますが、そちらも間もなく飽和することでしょう。私費診療分野の患者さんは要求水準も高いと思います。さてこの状況をどう切り抜けてゆくか?が問われます。菅原氏の分析は厳しいですが、従来のように医療費の値上げを国に要求すれば済むという状況はすでに超えており、全体として医療給付をどう制限して国民が負担できる医療介護費に水準合わせてゆくかを医療者も国民も考えるべき時が来ていると思います。

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「脱・税理士スガワラくん」によるYouTube動画「病院の倒産が急増しています。病院経営の厳しい現状をお伝えします。」の要旨です。


【病院倒産が急増する現状とその背景】

税理士・経営コンサルタントとして活躍する菅原氏は、2023年に80件、2024年には106件と急増する病院の倒産件数に着目し、その背景を語っている。特に「ベッド数20以上」の中小病院において、実に7割が赤字経営というデータ(東京商工リサーチ調べ)を示し、医療機関の経営状況が危機的であることを強調する。

最大の原因は「診療報酬の据え置き」である。物価や人件費、医療機器・光熱費、食材費など病院のコストは年々上昇しているにもかかわらず、国が定める診療報酬点数はほとんど上がっていない。入院患者に提供する食事に関しても、食材価格は上がっているのに、補助金額は据え置きのままだ。

さらに、コロナ禍を機に「病院へ行くこと自体がリスク」との意識が浸透し、軽症であれば市販薬で済ませる人が増加。これが患者数の減少、さらには入院数の減少に繋がり、病院のベッド稼働率は大きく落ち込んでいる。

地方病院の倒産が特に多い背景には、人口減少と医師不足がある。若手医師は研修先として東京など都市部を選び、そのまま都心に定着する傾向が強く、地方への人材還流が起きていない。また、地方病院では給料も上がりにくく、医師確保が難航している。

一方、自由診療である「美容クリニック」は診療報酬に縛られず、価格設定も自由であることから、経営が安定しやすく、労働環境も良い。そのため、勤務医や若手医師が美容医療に流れる傾向が加速している。

医療現場の業務負担やリスクの高さも深刻な問題であり、特に産婦人科や小児科、救命救急などの分野は24時間対応が求められ、プライベートの確保が困難であるため、なり手が減っている。過重労働に見合った報酬も得られにくく、医療の担い手のモチベーション維持も困難となっている。

菅原氏は、病院の経営問題は「医師=経営者」という構造に根本的な問題があると指摘する。医師は医学の専門家であって経営の専門家ではない。実際、黒字を維持している病院の多くは、経営コンサルタントを導入し、マーケティングやマネジメントに注力している。

また、病院経営の二極化も進んでおり、患者に支持される「人気の病院」には人が集まり、そうでない病院は経営が厳しくなる。パレートの法則に似た構造が形成され、医療分野でも「勝ち組・負け組」の分断が明確になっている。

菅原氏は、医療機関が地方でも持続的に存在し得るためには、全ての病院を国公立化し、医師を公務員化することも選択肢の一つだと提案するが、それには多くの課題があるとも述べている。

最後に、病院の経営改善には、医師が診療に専念し、経営は専門家に任せる「役割分担」が必要であるとまとめ、国民や行政の理解と連携によって医療崩壊を防ぐ取り組みが急務であると訴えている。

注:パレートの法則::医療業界におけるパレートの法則とは、「全体の成果の大部分が一部の病院によって生み出されている」という考え方です。たとえば、人気が高く患者が多い上位2割の病院が、業界全体の売上や利益の8割を占めているというような状況です。逆に、残りの8割の病院は患者が少なく、経営が厳しいことが多いということを意味します。

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