強度近視に伴いやすい眼疾患とは?
Q:コンタクトレンズ、特にハードコンタクトレンズの処方を求めて眼科に来院する患者さんには、-6.0Dよりも強い、いわゆる強度近視の患者さんが多いです。そのような強度近視の患者さんが合併しやすい緑内障、強度近視黄斑変性、その他の眼疾患には何が有るのでしょう。また、それらの診断方法や治療法も追記しましょう。眼科医はコンタクトレンズの処方時にも患者さんの目にこれらの変化がない事を確認しています。
A:強度近視(-6.0D以上)を持つ患者さんが合併しやすい主な病気とその診断方法、および治療法を以下に列挙します。
1. 緑内障
(近視の患者さんには自覚も診断もされていない緑内障が多いです) 診断方法:
- 眼圧測定
- 視野検査(最終診断に有効)
- 眼底検査(視神経乳頭陥凹のスクリーニングが有効)
- 角膜厚測定
- 眼前房深度測定(閉塞隅角緑内障では変化、原発開放隅角緑内障では正常)
- 画像診断(OCT:光干渉断層計で網膜神経線維層欠損をスクリーニング)
治療法:
- 点眼薬(プロスタグランジン類、ベータ遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬など)
- レーザー治療(レーザー虹彩切開術、選択的レーザー線維柱帯形成術など)
- 手術(線維柱帯切除術、MIGS(低侵襲緑内障手術)など)
2. 強度近視黄斑変性
(網膜の中心部分(黄斑)に年と共に進行する萎縮が発生することがあります。血管新生を伴い、加齢性黄斑変性に似たものです。) 診断方法:
- 眼底検査(黄斑部分に出血や萎縮が見られる)
- 蛍光眼底造影(FA)
- インドシアニングリーン蛍光造影(ICGA)
- OCT(OCTアンギオ撮影も有力)
治療法:
- 抗VEGF薬の硝子体内注射
- レーザー光凝固
- 光線力学療法(PDT)
3. 網膜剥離
(網膜に穴が開いて硝子体側から網膜下に硝子体液が流入して網膜が剥がれる疾患です。発生したら緊急に手術を考える必要があります。) 診断方法:
- 眼底検査(散瞳眼底検査で裂孔の場所を確認)
- 超音波検査
- OCT(ファイブラインズ法で明確に診断)
治療法:
- レーザー光凝固
- 冷凍凝固
- ガス注入手術(硝子体内ガス注入術)
- 強膜バックリング術
- 硝子体手術
4. 網膜裂孔
(網膜剥離の前段階と考えてよいでしょう) 診断方法:
- 眼底検査
- OCT
治療法:
- レーザー光凝固
- 冷凍凝固
5. 後部硝子体剥離(PVD)
(症状としては埃やごみが眼内に飛んで見える飛蚊症を呈します。原因が後部硝子体剥離なら、月単位での経過観察で手術はせずに収まるのを待ちます。) 診断方法:
- 眼底検査
- OCT
治療法:
- 通常は経過観察
6. 視神経萎縮
(網膜上の神経節細胞の軸索が視神経に流れ込む網膜神経線維層を形成します。この神経線維が変性して萎縮を示す疾患です。徐々に進む視野障害を起こします。) 診断方法:
- 眼底検査
- OCT
- 視野検査
治療法:
- 基本的には根本的な治療法はなく、原因疾患の治療や経過観察
7. 眼底出血
(網膜に現れる出血を総称して眼底出血と呼びます。次項の静脈閉塞もこの原因の一つです。) 診断方法:
- 眼底検査
- OCT
- 蛍光眼底造影
治療法:
- 抗VEGF薬の硝子体内注射
- レーザー光凝固
- 観察
8. 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)
(網膜上には動脈と静脈があり、静脈に閉塞が起きると刷毛で血液を塗り付けたかのような出血が起きます。) 診断方法:
- 眼底検査
- 蛍光眼底造影
- OCT
治療法:
- 抗VEGF薬の硝子体内注射
- コルチコステロイドの硝子体内注射
- レーザー光凝固
これらの疾患は、強度近視患者において早期発見と適切な管理が重要です。定期的な眼科検査を受けることを強く推奨します。
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