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[No.2820] 『夜想交叉路』青山繁晴著を読みました

『夜想交叉路』を読みました。主人公の俵藤静志は30歳前後の新聞記者で、両親を2歳で事故で亡くし、それ以来、祖母である春子によって実の子のように育てられました。俵藤家はかつての栄華を失い、家屋敷だけが残っている状態ですが、紡績工場も廃業まじかなようです。最近、春子が自宅の蔵の中身をすっかり廃棄したという話がありました。古家に残されている収蔵品には、思い出以上の大きな経済的価値は殆ど無いと思われますたが、刀剣を含む骨董品までも全てを捨てたようです。春子の出生に絡むややこしい家族関係が詳しく述べられ、祖母でありながら育ての母(おかあさん)でもある春子の存在感が印象的でした。

そんな静志が助けることになるのは、カナダ育ちの日本人女性の里子でした。彼女は夫の家庭内暴力に苦しんでいる他家の夫人で、静志とは何年か前に少しだけ面識があったそうです。静志は里子を伴ってニューヨークに赴任しますが、二人の関係は男女のそれではないというところがまたややこしいです。

その後、春子は里子との面会の後に天寿を全うして亡くなります。彼女の遺骨は自家の墓地ではなく、キリスト教団の共同墓地に納められたというところで物語は終わります。

なるほど、こういう人生もあるのだなと思わせる物語でした。どちらの女性にも共通するのは、女性であったがために基本的人権を犯され、それでもその不当な状況に強い意志と意地で立ち向かう姿です。ただ、後者の里子と静志の出会いが、必然的でも偶然的でもなく、どこか引っかかるものがありました。もう一度読み直すと、隠された伏線に気づくことができるのかもしれないと思いながら、帰省から戻る列車内でこの本を読了することができました。

追記:

青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road Home > 記事一覧 > 「風渡る五月がまもなく去るから、母のこと」。2019-05-30 に父母の記述があります。実家が紡績工場で、末子という辺り、そのままではなくとも著者の父母への思いがうかがえました。

◎作者の参議院議員青山繁晴氏は、清廉潔白な候補として自民党の総裁選への出馬を表明しています。昨日、岸田現首相は出馬辞退を表明しましたが、青山氏が推薦人20人を集めることはますます困難なようにも見受けられます。

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