眼科医療経済等

[No.3041] 『若手医師の希望するキャリアを尊重した、新専門医制度の在り方』受賞論文

【医学生・若手医師論文コンクール】最優秀賞作の発表

2023年の医学生・若手医師論文コンクールにおいて、浜松医科大学の渡辺莉代氏による『若手医師の希望するキャリアを尊重した、新専門医制度の在り方』が最優秀賞を受賞しました。本論文は、2024年2月21日に発表され、診療研究602号(2024年11月号)にも掲載されています。若手医師の研究活動を重視する新しい専門医制度の整備指針が打ち出される中で、若い医師のキャリア支援の在り方についての考察が示されています。

要点は:

1. 背景

2018年にスタートした新専門医制度では、若手医師の研究活動を重視する方針が掲げられています。しかし、2004年に始まった新医師臨床研修制度以降、大学病院での勤務経験がないまま市中病院での臨床研修を中心とする若手医師が増加した結果、研究に携わる医師の割合が減少している現状があります。若手医師の中で研究を希望する人材に対して、どのようなキャリア支援を提供すべきかが課題とされています。

2. 研究活動を希望する若手医師

厚生労働省の調査によれば、若手医師の約30%が将来のキャリアとして研究・教育を希望しています。この割合は市中病院勤務の医師にも同程度であり、若手医師がどの研修先でも適切な研究指導を受けられる体制づくりが求められています。

3. 自己研鑽と労働時間

若手医師の「自己研鑽」の時間については、労働基準法上での労働時間の扱いが明確ではない点が指摘されています。厚生労働省の指針では、上司の指示に基づく自己研鑽は労働時間として認定されるものの、それ以外の自己研鑽が労働時間に含まれるか否かの判断は曖昧です。このため、研究活動における労働時間の線引きが不明確であり、専攻医や管理者の間で混乱が生じています。

4. 医学生の意識調査

浜松医科大学の学生を対象とした調査では、医師を目指す多くの学生が研究活動や学会発表に意欲を持ち、これを自己研鑽の一環と認識しています。しかし、働き方改革に伴う労働時間の制約が、今後の研究活動への影響を懸念する声もあります。研究活動に意欲的な学生のモチベーションを維持し、学会発表や論文作成の機会を確保するための環境整備が必要です。

5. 結語

新専門医制度の学術活動要件によって、若手医師は臨床のみならず研究活動に携わる機会が増えました。しかし、特に市中病院では過酷な労働環境により過労死例も報告されており、全ての自己研鑽時間を労働時間とみなすことは、研究意欲のある医師の活動を制約する可能性があります。そのため、柔軟な制度運用が求められます。若手医師が望むキャリアを尊重し、臨床と研究のバランスが取れた環境づくりが必要です。今後は医学生の意見を取り入れ、診療と研究活動の調和が取れた制度設計が望まれます。


若手医師や医学生にとっても今後のキャリアに関わる重要なテーマとして、今回の受賞作が示す課題と提案には注目が集まっています。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。