清澤のコメント:JAMAの最新号にこの記事が出ています。眼科でも診療施設が投資ファンドに買い取られているという件は問題視されていますが、病院規模でもその傾向が重大な問題として見られているようです。
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プライベートエクイティ(投資ファンド)による米国病院の買収後における患者ケア体験の変化2025年1月9日公開 doi:10.1001/jama.2024.23450
序文
米国では、過去10年間で病院の「投資ファンド」(以下、ファンド)による買収が急増しています。このような買収は、収益性向上を目指す一方で、患者ケアの質に悪影響を与える懸念が広がっています。ファンドによる病院買収後の人員削減や利益増加が報告されていますが、医療の質や患者体験に及ぼす影響については一貫した結論が得られていません。患者ケア体験は医療制度の重要な指標であり、回復や治療の順守に直結するため、特に注目されています。本研究は、2008年から2019年にかけてファンドが買収した病院における患者ケア体験の変化を評価しました。
1. 研究の目的
本研究の目的は、米国内でファンドによる病院買収が患者体験に与える影響を分析することです。具体的には、患者が病院を評価する基準やスタッフの応答性、臨床プロセスなどの変化を明らかにすることを目指しました。
2. 研究デザイン
本研究では、ファンドが買収した73病院と、買収されていない293病院(対照病院)を対象に、買収前後の患者体験のデータを比較しました。分析手法には「差分差分デザイン」を採用し、買収の3年前から3年後までの期間における患者の報告データを評価しました。
3. 主な結果
患者体験の世界的指標
- 病院全体の評価:
買収病院では高評価とする患者の割合が買収前後でほぼ変わらず(65.0%→65.2%)。一方、対照病院では改善(66.2%→69.2%)し、両者の差は買収後に拡大しました(買収後3年目に最大 -5.2%)。 - 病院の推奨意欲:
買収病院では推奨する患者の割合が減少(66.9%→65.5%)。対照病院ではわずかに増加(68.2%→69.3%)。差は買収後3年目に最大で -4.4%。
二次指標
- スタッフの応答性:
買収病院では低下が見られました(-1.3%)。一方、臨床プロセスや施設環境には大きな変化がありませんでした。
4. 結論と影響
ファンドによる病院買収後、患者体験の質は悪化する傾向にあり、特にスタッフの応答性が低下しました。これらの結果は、収益優先の経営が患者中心のケアに悪影響を及ぼす可能性を示唆しています。医療政策立案者や病院経営者にとって、ファンドによる買収の影響を慎重に監視する必要があることを示しています。
5. 考察
患者体験の悪化は医療制度全体に深刻な影響を与える可能性があります。特に、日本においても医療機関の経営形態が変化する中で、この研究結果は重要な示唆を与えるでしょう。患者の満足度と医療の質を両立するための経営モデルの検討が必要です。
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