日本医師会雑誌2025年1月号では特集として災害医療支援が取り上げられています。日本の災害医療体制を簡単に説明して見ましょう。
日本の災害医療体制について:日本は地震や台風などの自然災害が多いため、災害時に迅速に医療を提供する体制が整備されています。 災害時の医療提供体制は、主に DMAT(災害派遣医療チーム)、DPAT(災害派遣精神医療チーム)、JMAT(日本医師会災害医療チーム)の3つのチームが中心となり、自衛隊や国際支援とも連携して活動します。
- DMAT(災害派遣医療チーム) :DMATは、厚生労働省が主導する 災害派遣医療チーム で、大規模災害発生時に 48時間以内 に現場へ駆けつけることを目的としています。 病院の 医師、看護師、薬剤師、救急救命士 などで構成され、特にトリアージ(治療の優先順位決定)や 重傷者の搬送などを担当します。 例: 2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震では、全国から DMAT が派遣され、多くの被災者を治療しました。
- DPAT(災害派遣精神医療チーム) :DPAT は 災害時の精神医療 を担うチームです。 大規模災害では、被災者が強いストレスを受けるため、心的外傷後ストレス障害(PTSD) や 急性ストレス反応 などの精神的な問題が発生しやすくなります。 DPAT の 医師や心理士 は、避難所でのメンタルヘルスケアを行い、心のケアを必要とする人々の支援をします。 例: 東日本大震災では、避難所で 不眠や不安 を訴える被災者にカウンセリングを提供しました。
- JMAT(日本医師会災害医療チーム) :JMAT は、日本医師会が主導する 災害医療チームで、中長期的な医療支援を目的としています。 DMAT は 発災直後の急性期に対応するのに対し、JMAT は 数週間から数か月間、被災地での診療や地域医療支援を行います。 避難所や仮設住宅での診察、高齢者の健康管理、感染症予防などが主な役割です。 例:熊本地震では、避難所や車中泊の被災者の診療を行い、エコノミークラス症候群の予防に努めました。
- 自衛隊の医療支援 自衛隊の医療部隊も、災害時に重要な役割を果たします。 災害が発生すると、陸上自衛隊の医療部隊 や 海上自衛隊の病院船 が派遣され、医療活動を行います。 野外手術室の設置、救急搬送、給水支援なども行い、被災地のライフラインが途絶えた場合でも医療を提供できます。 例: 2011年の東日本大震災では、ヘリコプターで被災地から重傷者を搬送し、仮設医療施設を設置して治療にあたりました。
- 国際医療支援との連携 日本は災害時に 海外からの医療支援 を受けることもあります。 また、日本自身も 海外で災害が発生した際に医療支援を行うことがあります。 たとえば、国際医療NGOや WHO(世界保健機関)と連携し、緊急医療チーム を派遣します。 例:東日本大震災では、アメリカ軍の「トモダチ作戦」 により医療物資や医療支援が提供されました。2015年のネパール地震 では、日本政府が 医療チームを派遣し、被災者の治療を行いました。
- まとめ 日本の災害医療体制は、 DMAT(急性期対応)、DPAT(精神医療)、JMAT(長期支援)、自衛隊の医療支援、国際医療支援が連携して成り立っています。 特に、日本は地震や台風が多いため、これらの体制が災害発生時に 迅速かつ効果的に機能することが求められます。
- 追記:眼科のビジョンバンの活動について:
ビジョンバンは、視力検査、眼圧検査、眼底検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底三次元画像解析検査など、眼科検査に必要な暗室機能を備えた車両です。 2024年1月20日と21日に、ビジョンバンは金沢市の「額谷ふれあい体育館」と「いしかわ総合スポーツセンター」で被災者支援を行い、2日間で82名の診察を実施しました。 診察を受けた方々からは、「点眼薬が切れた」「定期検査ができていない」「老眼鏡が無い」「目が乾燥する」などの訴えが多く寄せられました。 これらのニーズに応えるため、眼科医療関連団体から提供された点眼薬や老眼鏡、コンタクトレンズなどを被災者に提供しました。また、ビジョンバンまでの移動が困難な9名に対しては、スポーツセンター内で医師が往診形式で診察を行いました。ビジョンバンは、平時には健診活動を主体とし、有事には救援活動に活用されています。 金沢市内の眼科医療機関が活動できなかったわけでもないでしょうが、2日で82人という数は少なくはない数と思いますし、薬剤などを無料で供与されたのであれば、それは被災者に有効な助けになったことでしょうmed.or.jp
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