神経眼科

[No.3270] 上斜筋ミオキミアに対する様々な治療法について

上斜筋ミオキミアに対する治療法について

片眼がわずかに揺れる上斜筋ミオキミアに対する治療法についてまとめます。通常ベータブロッカーの点眼で症状の軽減を図りますが、より強い効果のある内服や手術などの方法も含め、患者さんに説明する文章を作りました。

(時々右目が上斜筋の作用方向の外下転方向へ、内方回旋しながら動く。細隙灯顕微鏡下で結膜血管の動きを観察すると分かり易い。神経眼科診療の手引き:石川弘著190pから借用)

上斜筋ミオキミア(SOM superior oblique myokimia)は、片眼の上斜筋が不随意に収縮することで、視界が揺れたり、物が二重に見える(複視)といった症状を引き起こす疾患です。この症状は数秒から数分間持続し、日常生活に支障をきたすことがあります。

治療法の選択肢: SOMの治療には、以下の方法が検討されます。

  1. 点眼療法:ベータブロッカーの点眼薬(例:ベタキソロール、チモロール等)を使用することで、症状の軽減が期待できます。この方法は非侵襲的であり、初期治療として試みられることが多いです。
  2. 内服療法:点眼療法で十分な効果が得られない場合、抗けいれん薬や抗不安薬などの内服薬(カルバマゼピン 1日200mgから効果を見て増減)が検討されます。これらの薬剤は神経の過剰な興奮を抑制し、投与後短期間にミオキミア症状の軽減消失を得る事も有ります。
  3. ボツリヌス毒素注射:眼瞼けいれんの治療として一般的に用いられる方法で、眼輪筋にボツリヌス毒素を注射することで筋肉の過剰な収縮を抑制します。効果は数か月と一時的であり、定期的な注射が必要となる場合があります。
  4. 手術療法:薬物療法で効果が不十分な場合、外科的介入が検討されます。具体的には、滑車神経を圧迫している血管が見つかればそれを神経から離す「微小血管減圧術」があります。この手術は全身麻酔下で行われ、後頭部を一部切開して顕微鏡を用いて神経と血管を分離します。国内では極限られた施設でのみ実施されており、専門医との相談が必要です。

治療法の選択:治療法の選択は、症状の程度や患者さんの全身状態、生活への影響度などを考慮して決定されます。まずは非侵襲的な点眼療法や内服療法から開始し、効果が不十分な場合にボツリヌス毒素注射や手術療法を検討するのが一般的です。各治療法には利点とリスクが伴いますので、主治医と十分に相談し、最適な治療法を選択しましょう。

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