ぶどう膜炎

[No.3325] 眼科領域の炎症性疾患と治療の変遷:木崎純一郎先生聴講印象録

眼科領域の炎症性疾患と生物学的製剤

昭和大学学術講演会

講師:木崎純一郎(昭和大学講師)

昭和大学学術講演会が開催された目黒の雅叙園は、近々閉鎖が予定されているとのこと(末尾注)。会場へ向かう館内の廊下には、押絵雛の手法で作られた大きな人形が展示されており、いつ見ても豪華な印象を与えるホテルであった。

眼科領域の炎症性疾患と治療の変遷

眼科領域の炎症性疾患は、以下のように多岐にわたる。

  1. 非感染性ぶどう膜炎

  2. 抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎、蜂巣炎、角膜炎

  3. 甲状腺眼症などの神経眼科関連疾患

これらの疾患、とくに自己免疫が関与する炎症性疾患に対して、かつての治療は副腎皮質ステロイドが中心であった。しかし、ステロイドには骨粗鬆症、感染症、心血管イベントのリスクなど全身的な副作用があるため、近年では長期投与例において極力投与量を減らすことが推奨されている。

その代替薬として用いられているのが免疫抑制薬であり、さらに近年では生物学的製剤が眼科領域でも広く使用されるようになっている。

生物学的製剤の進展

  • 2007年:ベーチェット病によるぶどう膜炎に対し、キメラ型抗TNF-α阻害薬であるインフリキシマブ(点滴)が登場。

  • 2016年:非感染性ぶどう膜炎に対し、ヒト型抗TNF-α阻害薬アダリムマブ(ヒュミラ:自己皮下注射)が保険適応となり、ぶどう膜炎診療において画期的な薬剤となる。

  • 視神経脊髄炎スペクトラム障害(抗AQP4抗体陽性視神経炎)

    • これまで難治であったが、現在では生物学的製剤が再発予防の第一選択肢となりつつある。

    • 保険適応のある薬剤:サトラリズマブ、エクリズマブ、イネビリズマブ、リツキシマブ、ラブリズマブの5種類。

  • アダリムマブ導入の流れ

    ステップ1,眼科医が適応を判断

  • ステップ2:投与前検査
  • ステップ3:リウマチ科へ紹介
  • ステップ4,投与開始
  • 甲状腺眼症(TED)

    • 直近では、海外においてテプロツムマブの効果が認められている。

    • 日本でも保険収載が進み、今後の使用機会が増えると予想される。

主要な疾患と生物学的製剤の適用

  1. ベーチェット病(指定難病)

    • 口腔アフタ、外陰潰瘍、HLA、好中球の異常が特徴。

    • 発作抑制にコルヒチンやシクロスポリンが使用されてきたが、重症例には生物学的製剤が適用可能。

  2. サルコイドーシス(指定難病84)

    • 肉芽腫を発症し、発症年齢のピークは20歳と50歳。

    • 虹彩結節、脈絡膜結節が見られる。

    • 高リスク例には生物学的製剤を追加。

  3. フォークト・小柳・原田病

    • メラノサイトに対する自己免疫反応による炎症。

    • 頭痛や視力低下を伴い、2割の症例で再発。

    • 初期治療としてステロイドパルス(500mg×3日)を行い、プレドニンを半年から1年で漸減。

    • 再発例にはアダリムマブが使用可能。

  4. 抗AQP4抗体陽性視神経炎(NMO-SD)

    • アストロサイトに対する自己免疫反応。

    • NMO-SDとMOG抗体関連疾患に分類。

    • NMO-SDには抗免疫薬や生物学的製剤が治療の中心。

  5. 甲状腺眼症(TED)

    • 最近、テプロツムマブが治療選択肢として使用可能になっている。

まとめ

本講演では、眼科領域における非感染性炎症性疾患の診療フローおよび各疾患に対する生物学的製剤の活用について、詳細な解説が行われた。従来のステロイド治療に加え、生物学的製剤の適用が広がることで、より安全で効果的な治療の選択肢が増えていることが強調された。

雅叙園に関する注記:ホテル雅叙園東京は、2025年9月30日をもって建物所有者との定期建物賃貸借契約が満了となるため、2025年10月1日より一時休館となります。

休館後の営業再開時期については、現在未定であり、決まり次第案内される予定です。10月1日以降の婚礼、宴会、宿泊、レストラン、東京都指定有形文化財「百段階段」の予約は受け付けておらず、既に予約済みのお客様には各担当者から個別に連絡が行われるとのことです:

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