全身病と眼

[No.3642] ペットボトル症候群と目の健康

「ペットボトル症候群」って知っていますか?
~清涼飲料の飲みすぎが引き起こす目と体のトラブル~
最近、暑い日が続くと冷たい飲み物を頻繁に飲みたくなりますね。とくにコンビニや自販機で手軽に買えるペットボトル飲料は、甘くておいしく、つい毎日のように飲んでしまう方も多いと思います。
ところが、こうした「甘い清涼飲料」のとりすぎが、健康に悪影響を与えることをご存じでしょうか?
特に10代から30代の若い世代に増えているのが「ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)」と呼ばれる病態です。
この症候群は内科的な問題だけでなく、目や視力にも影響を及ぼすことがあるため、眼科医の立場からも注意を促したいと思います。
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◆ペットボトル症候群とは?
「ペットボトル症候群」とは、糖分の多い清涼飲料を日常的に大量に摂取することで、急性の高血糖状態に陥ることを指します。正式には「清涼飲料水ケトーシス」や「急性糖尿病性ケトアシドーシス」とも呼ばれます。
主に以下のような飲料が関係しています:
• 炭酸飲料(コーラ、サイダーなど)
• スポーツドリンク
• 加糖紅茶飲料、加糖コーヒー
• 果汁飲料(ネクター、濃縮還元ジュース)
• エナジードリンク
これらには、500mlあたり30~60gもの糖分が含まれていることがあり、日常的に1~2リットル以上を飲み続けると、血糖値が異常に上がり、インスリンが追いつかなくなります。スポーツドリンクも良くないことに注目。殊に、日本人にはインスリン分泌量の少ない人が多いと言われています。

とくに隠れ糖尿病の方や、インスリン分泌に問題がある若年者では、代謝異常が急激に進行して、ケトーシス(ケトン体の過剰産生)や脱水を引き起こし、だるさなどを訴えることがあります。参照:
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◆どんな症状が現れるの?
ペットボトル症候群になると、以下のような症状が出てくることがあります:
• 強い喉の渇き
• 頻尿
• 体重の急激な減少
• 倦怠感・疲れやすさ
• 吐き気・嘔吐
• 呼吸が荒くなる
• 意識の低下(重症の場合)
このような症状が現れた場合、すぐに内科を受診することが重要です。
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◆目や視力への影響は?
眼科医として注目したいのは、血糖値の急激な変動が視力や視覚機能に影響を与えることがあるという点です。
一過性の視力低下
血糖値が急激に上昇すると、眼の中の水晶体がむくみ(浮腫)を起こし、近視化してしまうことがあります。これにより、視力が一時的に低下し、眼鏡が合わなくなったと感じることがあります。
また、急激な高血糖状態では、網膜の血管の透過性が変化して、浮腫やぼやけ感を感じるケースも報告されています。
血糖値が落ち着けば改善するが…
こうした視力変化は、多くの場合、血糖値の安定とともに改善しますが、繰り返されると網膜血管にダメージが蓄積し、将来的に糖尿病網膜症のリスクが高くなります。
特に若年発症の2型糖尿病では、糖尿病網膜症の進行が早く、視力障害のリスクが高いことが報告されています。
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◆どうすれば防げるの?
ペットボトル症候群を予防するためには、まず日常の飲み物を見直すことが大切です。
飲み物の選び方
• 砂糖入りの清涼飲料水は「週に1回以下」にするのが理想です
• のどが渇いた時は「水」「お茶(無糖)」「炭酸水」などを選びましょう
• スポーツドリンクは発熱時や運動直後など、必要な場面に限定しましょう
生活習慣の見直し
• 規則正しい食事と睡眠を心がける
• 定期的な血糖チェック(特に家族に糖尿病がある方)
• 視力の急な変化があった場合は、早めに眼科受診を
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◆まとめ
「たかが飲み物」と思って油断していると、思いがけない病気の入り口になることがあります。
ペットボトル症候群は、生活習慣のちょっとした見直しで防げる病気です。
さらに、高血糖による視力の変化が起きた場合には、眼科での早期発見が予後を左右します。
とくに若い世代の方、お子さんをお持ちの保護者の方は、ぜひ一度、ご家庭でも話題にしてみてください。
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【参考】
• 日本糖尿病学会:糖尿病ケトアシドーシスに関する指針
• 日本眼科学会:「高血糖による屈折変化」
• Nagai Y et al. “Soft drink ketosis: a health hazard for the young” (Int Med, 2004)

◎ ボトル飲料の糖が脂肪肝の大きな原因だというお話です。(以後取り上げる予定です。)

・糖質疲労: 関連しそうな最近の記事:

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