眼科医療経済等

[No.3676] 2040年の日本医療:「医療の地獄絵図」が現実になる日:動画紹介

清澤のコメント:私が目黒区に眼科医院を移転してから3年。コロナ禍の後の影響も受け、医院経営の厳しさを日々感じています。そんな中、私と同年代の脳神経外科医であり病院経営者でもある熊代義明氏の警鐘に、強く共感しました。彼の語る「2040年、医療の地獄」は、決して他人事ではありません。ただ、具体的な解決策が十分に示されているとも言えません。

■ 認知症患者が街にあふれる未来

熊代氏は、2035〜2040年には認知症高齢者が適切な医療を受けられず、社会に溢れ出すと述べています。前頭側頭型認知症のように行動障害を伴うケースは特に対応が難しく、地域全体にトラブルを及ぼす可能性があります。

彼は「認知症は記憶の病気ではなく、社会と摩擦を生む病気」と定義し、外見や言動が普通に見えることで対応が遅れる危険性を強調しています。

■ 高齢単身者の急増と「孤独死」問題

75歳以上の単身世帯は急増しており、認知症と重なれば、孤独死や周囲とのトラブルが深刻化します。制度設計が「家族介護」を前提としているため、疎遠な家族がいるだけで行政支援の対象から漏れるケースも増えています。

■ 担い手不足が医療・介護の崩壊を招く

医療や介護は「3K職場」と見なされ、若者の志望離れが進んでいます。外科医の平均年齢は50歳を超え、10年後にはほとんどが引退世代に。手術ロボット導入もコストと技術の壁で現場の救済にはつながりません。

このままでは、医師・看護師・介護職がいなくなるという現実が、静かに進行しています。

■ 医療制度の限界と変わる国民意識

国民皆保険制度は理想的な制度でしたが、現在は持続可能性に黄信号が灯っています。医療費抑制のために病院の経営は圧迫され、点数主義によって診療の偏りも生じています。

また、若い世代にとっては「低賃金で高齢者医療を支えること」への不満が膨らみつつあります。支える側と支えられる側のバランスが崩れれば、制度自体の維持は困難になるでしょう。

■ 長寿社会の幻想に向き合う

「人生100年時代」と言われますが、健康で自立し、社会と調和できる長寿こそが意味あるものです。寝たきりや認知症による孤立が長く続くことは、本人にとっても周囲にとっても不幸です。長寿は目的ではなく、手段であるべきなのです。

■ 私たちの選択が未来を決める

この未来を避けるには、私たち一人ひとりが「どんな医療を受けたいのか」「どこでどんな最期を迎えたいのか」を考える必要があります。地域医療を担う立場として、患者さんと人生の後半をどう過ごすかを共有する対話を重ねることが、これからの診療の中心になると感じています。


参考:熊代義明『2040年 医療の地獄絵』、ピボットーク(2025年6月)より要約

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