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[No.3678] Jerry Shields先生ご逝去:Wills eye Hospital眼腫瘍部門教授

眼腫瘍診療の先駆者 Jerry A. Shields 医師、逝去

2025年6月22日、眼腫瘍診療の世界的先駆者であるJerry A. Shields 医師が、家族に見守られながら静かにその生涯を閉じられました。享年87歳。彼の存在は、眼科医療の一分野である「眼腫瘍学(Ocular Oncology)」を世界に確立させたと言っても過言ではありません。

Dr. Shields は1937年、米国ケンタッキー州の田舎町に生まれ、8人兄弟の末っ子として育ちました。若き頃から生物学に関心を持ち、蝶を分類して展示するなど、科学への情熱は早くから明らかでした。ミシガン大学医学部を卒業後、海兵隊軍医としてベトナム戦争に従軍。帰国後、Wills Eye Hospital(米国フィラデルフィア)の眼科レジデントとなり、その後のフェローシップを経て1974年、世界初の眼腫瘍専門センターの一つを設立しました。

当時、眼の悪性腫瘍(とくにぶどう膜悪性黒色腫など)は、視力温存が困難とされ、多くが眼球摘出の対象でした。しかし、Dr. Shields は眼球内腫瘍の早期診断法(超音波、蛍光眼底造影、放射性同位元素検査など)を確立し、さらに放射線治療(プラーク療法)による温存治療を先駆的に導入。その成果は「眼腫瘍でも視力を守れる」時代の幕開けとなりました。

後年、妻であり眼腫瘍学の共同研究者であるCarol L. Shields 医師と共に、Wills Eye Hospital の眼腫瘍科を世界最大の眼腫瘍専門施設に成長させ、二人でこれまでに約300名のフェロー(専門医)を世界中に輩出しました。

彼の生涯の業績は驚くべきもので、2,000本を超える医学論文、700以上の教科書章、13冊の専門書を著し、世界中の眼科医に眼腫瘍診療の指針を提供してきました。また、2014年には米国眼科学会の最高賞「Laureate Award」を受賞し、生涯の功績が称えられました。

Shields 医師の存在は、ただ一人の医師の域を超え、眼腫瘍学という分野そのものを築いた象徴的存在でした。彼が育てた医師たち、救われた患者たち、そして残された学術資産は、今後も世界中の医療現場で生き続けます。

なお、ご遺族の希望により、花や供物の代わりに、Jerry A. Shields Eye Cancer Fund(https://JASeyecancerfund.com) への寄付が呼びかけられています。これは彼の遺志により、眼腫瘍のさらなる研究支援に充てられるとのことです。

私たち眼科医は、Shields 医師の偉大な功績と精神を受け継ぎながら、目の健康と命を守る医療をこれからも追求してまいります。

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