医療崩壊に導く5つの罪。医療経営の「地獄」を回避するために必要な視点とは 熊谷頼佳 氏の視点;
https://youtu.be/pnM0vqJ6nFg?si=97Nj518BoqQ6v5VL
現在、日本の中小病院の経営が危機に瀕しています。病院数は減少し、特に中規模の医療機関が次々と倒産しています。その背景には、戦後に民間の力を借りて構築された医療体制のひずみ、そして非効率な経営構造が根底にあります。
民間病院は非営利であることが前提とされており、拡大再生産やデジタル化に必要な投資が困難です。一方で、建物の老朽化や人件費の高騰が重くのしかかり、金融機関からの支援も得にくい状況が続いています。特に個人経営の小規模病院では、借金を背負っている院長が合併もままならず、閉院すらできずに苦しんでいる実情があります。
こうした背景の中で、日本の医療政策の最大の課題は、データに基づいた制度設計がなされていないことです。どの治療が有効で、どれが無駄なのかという医療評価を、他国ではすでにデジタル化とAIを駆使して実現しています。韓国やオーストラリアでは、診療行為・処方内容・治療効果が中央のサーバーで解析され、医療制度設計に活かされていますが、日本ではいまだに紙カルテも多く、電子カルテ間の連携も不十分です。
また、「医者=儲かっている」という世間の誤解も根深い問題です。特に開業医は長時間労働・借金・人件費負担に苦しみながら経営しており、決して裕福な生活とは限りません。制度上も、非営利医療法人には株式会社のような資本注入や経営の自由がなく、効率的な病院経営を阻んでいます。
さらに、医療制度そのものが「病気になってから」の対応を基本に設計されており、予防医療には報酬が支払われないのが現状です。例えば、診察で適切な生活指導をしても、薬や検査、手術を伴わなければ報酬ゼロ。これは医療の本質と乖離しており、早急な見直しが求められます。
今後、テクノロジーの導入も医療改革の鍵となります。AIによる問診補助や介護ロボット、遠隔医療といった未来技術を実装するには、まずは国家的な投資と法整備が不可欠です。民間企業の参入も促し、持続可能な医療システムへと移行する必要があります。
特に注目すべきは、医療のスケールメリットです。単独では限界のある小規模クリニックや病院が、グループ化やM&Aによって連携することで、人材の融通や資源共有が可能になります。これは医療の質と継続性を高める有効な方法です。
最終的には、患者自身が自らの人生設計に合わせて医療を選ぶ時代に入ると述べられています。100歳まで管に繋がれ意識がない状態で生きるのか、元気なうちに自らの最期を考えるのか。医療の質・価格・選択肢が多様化する中で、国民一人ひとりの医療リテラシーの向上が不可欠です。
医療の未来は、制度の見直しと技術革新、そして何より患者の主体性によって支えられます。今こそ「医療経営=ビジネス」という視点を受け入れ、持続可能な医療のための真の改革を進める時です。
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