ビジュアルスノウ

[No.3704] ビジュアルスノウ症候群 Q and A Dr ハン 3巻

◎ ハン博士のビデオ第3巻です。

その要旨:VSS(ビジュアルスノウ症候群)の診療で印象深い体験として、語り手は2つの例を挙げています。ひとつは、30歳女性の患者さんで、VSSに悩みながらも情報を自ら探し、医療機関を訪ね歩いていました。しかし多くの医師に「何もできない」と言われてきた中、語り手の同僚が対応可能な医師を紹介。初診時に行ったカラリメトリー検査で大きな効果を感じた彼女は、その経験を他者に伝えようと活動を続けています。「これは心の問題ではなく、評価と治療の対象になる症状だ」と広く知らせることに力を注いでいるとのことです。

もうひとつは、POTS(体位性頻脈症候群)を併発した若い女性たちのグループで、Nort療法によって週ごとに改善が見られ、医療チームと患者が一体となって回復を喜び合っている様子が語られました。

VSSがICD-11に登録されたことの意義については、これまで「主観的視覚障害」としてしか保険診療で扱われず、治療に限界があったものの、正式な診断名として認識されることで保険適用が拡大し、治療への道が開かれると期待されています。

今後5年間の目標として、患者をより具体的なカテゴリーに分けて理解し、背景疾患との関連性を探ることが挙げられています。たとえば、関節が柔らかい「エーラス・ダンロス症候群(EDS)」の患者にVSSが多く見られる例などから、VSSが他疾患と関連する可能性が示唆され、単独ではなく複合的病態の一部としての理解が進むことが望まれています。これにより、VSSの原因解明にもつながるかもしれません。

最後に、VSS患者や家族へのメッセージとして、「自分の症状を信じ、声を上げ続けてほしい」と述べています。患者は文献を読み、自ら情報を求める姿勢を持っている一方で、とくに小児や若年者は「白い壁に点々が見えるのは普通ではない」と気づくのに時間がかかることもあると指摘。医療者には、患者の訴えを「精神的な問題」として片付けず、安心を与えることの重要性が強調されました。症状を否定せずに理解し、治療可能性を伝えることで、患者の不安を軽減し、信頼関係を築く第一歩になると語っています。

英語で視聴するのも面倒という方のために上記ビデオの直訳を採録します。

Q:VSS(ビジュアルスノウ症候群)の患者さんとの関わりで、最もやりがいを感じた経験を教えてください。

2つのグループが思い浮かびます。

ひとつは個人としての患者さんで、30歳の女性が来院しました。彼女は自ら情報を探し、VSS(ビジュアルスノウ)について評価し、治療の選択肢を求めて医療機関を訪ね歩いていました。でも、どこへ行っても「何もできない」と言われ続けていたそうです。

ある時、私の同僚が彼女と出会い、「VSSについて診てくれる人がいますよ、予約を取りましょう」と伝えました。

それからの彼女は本当に嬉しそうで、色彩計測(カラリメトリー)を行って試験レンズをかけた瞬間、「これ、持ち帰っていいですか?」というくらい効果を感じてくれました。ほとんど調整期間も要らなかったほどです。

彼女は今でも、VSSを他の人に理解してもらうことの大切さを訴え続けています。「これは心の問題ではなく、評価可能な症状なんだ」と広めようとしてくれています。治療者にも「希望を与えて」と言ってくれる、非常に印象深い患者さんでした。

もうひとつのグループは、POTS(体位性頻脈症候群)を併発している若い女性たちです。Nort療法(おそらくノルトリプチリン)で週を追うごとに明らかな改善が見られ、今でも私の研修医たちとともに「今週はどんな変化があった?」と、患者と一緒に喜びを分かち合っています。


Q:VSSがICD-11(国際疾病分類)に登録されたことで、医師や研究者として、また患者さんにとって、どんなメリットがありますか?

現在、保険診療では「主観的な視覚障害」という形でしか対応できず、一定回数以上の診察に保険が適用されないことがあります。

ICD-11に登録されたことで、より正式な病名として認識され、治療の保険適用の拡大につながることを期待しています。


Q:今後5年間で、VSS患者のために取り組みたいことは?

今後の治療やマネジメントにおいて、患者さんをより明確なカテゴリーに分けて理解していくことが大切だと考えています。

たとえば、関節が非常に柔らかい「エーラス・ダンロス症候群(EDS)」の患者さんの中にVSSを発症している方が見られ、「医師に検査を勧められた」と言う人もいます。

このように、VSSが他の疾患と関連している可能性を医学界が認識することが重要です。脳震盪後症候群(ポストコンカッション)などもそうですが、「VSSは孤立した症状ではなく、他の病態の一部である」ことを今後明らかにしていきたいと思っています。

そしてそれがVSSの根本的な原因に迫るヒントにもなるかもしれません。


Q:VSS患者さんやその家族・支援者に伝えたいメッセージは?

VSSを抱える患者さんに伝えたいのは、「自分の症状を信じて、声を上げ続けてください」ということです。私の患者さんたちは、本当に自ら文献を調べ、質問を用意して来院されます。そして、私に読んだ論文を見せて「これ正しいですか?」と確認してくれる。

特に12歳くらいの子どもたちには、「自分の見えている世界がおかしいと感じたら、それを信じてほしい」と言いたいです。

「白い壁に点々が見えるのは普通じゃない」ということを、20歳になって初めて知ったという患者さんもいます。

医療者側には、患者の声に耳を傾け、症状を否定せずに受け止めて欲しいと強く願っています。VSSを「精神的な問題」だと片付けず、不安の裏にある本質を見て、患者に寄り添ってください。

「この病気の存在を知っている」「治療の可能性がある」と伝えるだけでも、患者は大きな安心を感じてくれます。その安心感が、医師との信頼関係につながるのです。

どうか、焦らず、根気強く対応してください。

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