「Visual snow ―持続性片頭痛前兆とは異なる視覚障害」がビジュアルスノウタイムライン(Visual Snow Timeline | Visual Snow Initiative)という新たなページで紹介されています。これを再録します。
「ビジュアルスノウ」は片頭痛前兆とは異なる、独立した視覚障害
出典: Christoph J. Schankin, Farooq H. Maniyar, Kathleen B. Digre, Peter J. Goadsby
掲載誌: Brain, Volume 137, Issue 5, May 2014, Pages 1419–1428
DOI: https://doi.org/10.1093/brain/awu050
◆ はじめに
「ビジュアルスノウ(visual snow)」とは、視野全体にアナログテレビの砂嵐のような無数の小さな点が常に見える状態です。
この症状を訴える人は、しばしば眼科検査や脳の画像検査で異常が見つからず、「片頭痛の前兆が続いているだけ」や「過去の幻覚薬のフラッシュバック」「心因性障害」などと診断されがちです。
本研究では、「ビジュアルスノウ」はこれらとは異なる、独立した病態であることを示すため、3段階にわたる調査を行いました。
◆ 調査方法と結果のまとめ
① 医療機関でのカルテ調査(22名)
-
22名のビジュアルスノウ患者を確認
-
うち15名に追加の視覚症状あり(例:残像、光視症など)
-
20名に片頭痛の合併あり(そのうち5名は前兆を伴う片頭痛)
② インターネット調査(275名)
Eye On Vision Foundation によるアンケート(回答275件、うち235件が完全回答)
-
以下の追加症状が33%以上の人に見られました:
-
パリノプシア(残像や軌跡)
-
内視現象(飛蚊症、青空での点光、目の中の自発光、光視症)
-
羞明(光過敏)
-
夜盲(暗所視力の低下)
-
③ 電話による面接調査(142名)
-
78名(うち女性41名)がビジュアルスノウと確認され、眼科検査は正常
-
そのうち72名が上記②の追加視覚症状を3つ以上持つ
-
約25%の人は「物心ついた時から症状があった」と回答
-
他の人では発症年齢は平均21歳(±9歳)
-
32名は症状が常に続いており、他は進行性または段階的に悪化
-
症状の発症または悪化のきっかけは以下のようなもの:
-
頭痛(36%)
-
片頭痛の前兆(少数:7名)
-
違法薬物の使用(5名、幻覚剤ではなかった)
-
◆ 合併症・家族歴・治療
-
併存症として多かったもの:
-
片頭痛(59%)
-
前兆を伴う片頭痛(27%)
-
不安やうつ症状
-
-
8名は一親等の家族にもビジュアルスノウを持つ人がいた
-
医学的検査では明確な異常は見つからず
-
治療については、一部の患者に有効な例はあったが、確立された方法はまだない
◆ 結論と提言
-
「ビジュアルスノウ」は、片頭痛前兆とは異なる、独立した視覚障害と考えるべきです。
-
患者にとっては日常生活に支障をきたす深刻な問題でありながら、これまで十分な注目がされていませんでした。
-
今後はこの症状をひとつの疾患として正式に認識し、原因・診断・治療法の体系的研究が必要です。
◆ 院長コメント
ビジュアルスノウ症候群は、見た目には分かりにくく、他人に理解されにくい視覚的な不快感を伴います。眼科や神経科での診断がつかず、患者が苦しむケースも多い中で、このような体系的な研究は大きな意義があります。
引き続き、日本でもこの疾患への認知が高まり、適切な診療・研究が進むことを願っています。 この論文の著者はシェイキン、ディグレ、ゴーズビーと錚々たる著者で雑誌も有力なブレイン誌です。日本にもこの疾患を質医師は少なくないのですが、私清澤はこのページを掲示しているビジュアルスノウイニシアチブという団体の日本人唯一の相談医に登録していただいています。
出典:
Schankin CJ, Maniyar FH, Digre KB, Goadsby PJ.
‘Visual snow’ – a disorder distinct from persistent migraine aura. Brain. 2014 May;137(5):1419-1428.
doi: 10.1093/brain/awu050
コメント