討論動画「日本財政は本当に危ないのか?」要点まとめ
出演者:会田卓司(岡三証券チーフエコノミスト)、須田慎一郎(ジャーナリスト)
清澤のコメント:自民党の総裁選が近づいて、候補者も出そろってきました。国民経済に多少なりと関心のあるものからすれば、プライマリーバランス重視ではなく、国の経済支出出動を唱える高市早苗氏のみが救世主のようにも見えますが、大人の理由はそう簡単には世を動かさないようです。今朝公表された会田卓司氏と須田慎一郎氏の動画をまとめてみました。
企業が投資しない理由
討論は「なぜ日本の企業が投資や賃上げを控えて内部留保ばかり積み上げるのか」から始まります。背景には、名目GDP=経済のパイが長らく拡大しなかった事実があります。パイが増えないと企業は合理的に投資ではなくコスト削減へ走り、安売り競争でシェアを奪うしかなくなります。これがデフレ的な停滞を生んできました。
財政は本当に危ないのか?
一見、日本は「GDPの2倍以上の政府債務」で危ないように見えます。しかし実際には次の点が重要です。
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フロー(毎年の収支):企業が借金せず貯蓄超過のため、政府が赤字を出して需要を補い、景気を支えてきた。財政赤字の大小は単体でなく、民間の資金需要と合わせて評価すべき。
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ストック(蓄積した残高):日本は政府債務が大きい一方で外貨準備などの金融資産も膨大に持ち、純債務は米国より小さい。企業債務も長年の返済でほぼゼロに。政府と企業を合わせた「経済全体のレバレッジ」は米欧より低い。
つまり「借金だらけ」というイメージは誤解で、むしろ負債が少なすぎるため家計資産が増えにくい構造になっています。
コロナ期で見えた教訓
コロナで大規模財政が行われると、名目GDPは長年停滞した525兆円から一気に630兆円規模へ膨らみました。株価も上昇し、企業投資も活発化。少子高齢化下でも適切な財政拡大で経済のパイを広げられることが実証されました。
政策ミスと今後の方向性
1990年代半ば以降、消費税増税や「プライマリーバランス黒字化目標」に縛られた緊縮志向が、日本の経済規模を押し縮め、企業をコスト削減依存に追い込んだと批判されています。
今後必要なのは:
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家計の可処分所得を増やす(減税や社会保険負担の見直し)
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成長投資を官民で拡大(デジタル、医療、防災、エネルギーなど)
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マクロで資金循環を管理し、ネットの資金需要を▲5%前後に保つ
これにより消費が回復し、企業は投資競争へ転換、結果的に税収も増え「真の財政健全化」に近づきます。
まとめ
討論が示したのは、「財政赤字=悪」という単純図式の誤りです。国全体の資金循環を見れば、日本はむしろ財政余力を活かすべき状況にあります。経済のパイが拡大すれば、企業は合理的に投資を選び、家計の暮らしも安定。結果的に財政の持続性も高まります。
眼科医院の立場から見ても、家計環境が安定すれば受診控えが減り、慢性疾患の管理が行き届くことにつながります。財政政策は私たちの日常医療とも無縁ではない——そのことを意識して今後の議論を見守りたいと思います。
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