社会・経済

[No.4018] バッパショウタ氏、ニューヨークのユダヤ人街を取材

バッパショウタ氏、ニューヨークのユダヤ人街を取材――「閉ざされた世界」の実像

バッパショウタさんは新疆ウイグル自治区を取材した後、しばらく口をつぐんでいました。厳しい現実を伝えたその後に続く発信はありませんでしたが。このたび少し前のものですが、ニューヨークのユダヤ人に関する動画を拝見しました。今回はその内容をまとめ、眼科院長ブログの記事としてご紹介します。


超正統派ユダヤ人「ハシディック」の街へ

ニューヨークには約170万人のユダヤ人が暮らし、その中核を成すのがブルックリンの「ハシディック」コミュニティです。黒い帽子とスーツ、長いもみあげという独特の姿は、まるで200年前の東欧から時を止めて移り住んだかのよう。スマートフォンは戒律により制限され、ガラケーや厳格に監視された端末を使用する人もいます。背景にはホロコーストの記憶と外部への警戒心があり、共同体の自立と結束が強く維持されています。

言葉と教育

彼らの母語は東欧系ユダヤ人が話していたイディッシュ語。祈りは古代ヘブライ語で捧げ、公教育ではなく共同体運営の私立学校で宗教と伝統を学びます。毎週の安息日「シャバット」には電気や携帯を使わず、家族と語り合い、書物で学ぶ時間を大切にします。禁止事項をただ受け入れるのではなく、「なぜ禁じられているのか」を理解し共有する姿勢が特徴的です。

服装と家族観

男性は神への畏敬を象徴する小帽「ヤームルカ」や祝祭日用の高価な毛皮帽「シュトレーメル」を着用。女性は結婚後、地毛を隠し、服装は控えめさを重んじます。結婚は18歳前後と早く、仲介者を通じて1~2度の面会で婚約に至ることも。子どもは平均7~8人、多い家庭では10人以上に及びます。「産めよ、増えよ」という聖書の言葉に忠実で、共同体を拡大していくことが使命とされています。

食と生活の戒律

食事は厳格な「コーシャ」に従います。肉と乳製品を混ぜないため調理器具も色分け。街にはコーシャ食品専門店やレストランが並び、肉を使わない料理はベジタリアンやヴィーガンにも支持されています。救急や治安維持も民間組織「ハツァラ」や「ショムリム」が担い、公的サービスの隙間を埋める役割を果たしています。

現代社会との距離感

ハシディックは近代化に背を向けつつも、「なぜネットを使わないか」を自覚的に説明します。必要なときは限定的に利用し、子どもや信徒を守るため監視や制限を設ける。戒律は単なる「禁止」ではなく「自己抑制の技術」として機能しているのです。

信仰と世界観

彼らにとってトーラー(聖書)は人生の指針。迫害と流浪の歴史を生き延びたのは、信仰が生きる意味を与えたからだと語ります。神の存在は証明できないが、信じる選択を毎日することが信仰であり、人と人を結ぶ力だと。男女の役割は異なるが、差別ではなく「別の使命」と捉え、誇りをもって生活しています。

衝突と平和への願い

イスラエル建国やパレスチナ問題に対しては意見が分かれますが、共通するのは「流血なき解決を望む」という声。外からは閉ざされた世界に見えても、内側には葛藤と祈りが交錯しています。


清澤のコメント

外部から見ると「不自由な生活」に思えますが、彼らは「なぜそうするか」を理解し、自らの選択として規律を受け入れています。この姿勢は、医療現場における患者説明にも通じます。理由を伝え、納得を得ることが行動変容につながるのです。違いを「閉ざされたもの」と片付けず、学びとして受け取る視点が必要だと感じました。

私は1988年頃に留学でフィラデルフィアに2年ほど住みました。そこでは医師を含め多くのユダヤ人がアメリカ社会に溶け込んでおり、祝祭日には眼科病院からユダヤ人医師がごっそり姿を消すほどでした。今回の動画を見て感じるのは、世界中のユダヤ教徒が必ずしもイスラエル支持ではないという点です。ガザ地区でのパレスチナ住民に対する迫害を批判する声もあるなかで、多様な立場が存在することを再確認しました。


出典動画:Bappa Shota「Inside America’s Largest Judaism Community」(YouTube公開:表記「約1年前」)

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