全身病と眼

[No.4064] 「血をサラサラにする薬」は、多すぎても危ない?

「血をサラサラにする薬」は、多すぎても危ない?

―脳の病気と心臓の病気をもつ人のための新しい研究―


人の体の中では、血液が流れて体に必要な酸素を運んでいます。ところが、血がかたまりやすくなると、脳の血管がつまって「脳こうそく」を起こすことがあります。これを防ぐために使われるのが、血をサラサラにする薬(抗血栓薬)です。

この薬には2つのタイプがあります。

  1. 抗凝固薬(こうぎょうこやく):心臓の中で血が固まるのを防ぐ薬。

  2. 抗血小板薬(こうけっしょうばんやく):血管の中で血小板が集まるのを防ぐ薬。

では、この2つの薬を「いっしょに飲めば、もっとよく効く」のでしょうか?

日本の先生たちが、これを調べるために大きな研究をしました。


■ どんな研究?

全国の41の病院で、316人の患者さんに協力してもらいました。

みんな、脳こうそくを起こしたことがあり、心房細動(しんぼうさいどう:心臓のリズムが乱れる病気)と動脈こうか(血管がかたくなる病気)を持っていました。

参加した人たちを2つのグループに分けました。

  • ① 抗凝固薬だけを飲むグループ

  • ② 抗凝固薬と抗血小板薬の2種類を飲むグループ

そして、2年間、どんな違いがあるかを調べました。


■ 結果はどうだったの?

なんと、2種類の薬を使っても脳こうそくが減らなかったのです。

それどころか、出血のトラブル(血が止まりにくい、鼻血やあざなど)が2倍くらい多くなっていました。

つまり、「薬をふやしても、よくならないどころか、かえって危ない」ということがわかったのです。


■ どうすればいいの?

この研究の結論はとてもシンプルです。

「抗凝固薬だけを使うほうが安全で、出血も少ない」

とくにお年寄りでは、出血すると転んだり、目や脳の中で血が出ることもあります。だから、薬は“多ければいい”ではなく、“ちょうどいい量”が大事なのです。


■ まとめ

  • 脳こうそくを防ぐ薬には2種類ある。

  • 2種類をいっしょに使っても効果は変わらない。

  • 出血がふえるので、1種類で十分安全。

  • 薬を飲むときは、必ずお医者さんに相談しよう。


出典

Okazaki S, Tanaka K, Yazawa Y, et al.

Optimal Antithrombotic Therapy for Ischemic Stroke With Concomitant Atrial Fibrillation and Atherosclerosis: A Randomized Clinical Trial.

JAMA Neurology. Published online October 6, 2025. DOI: 10.1001/jamaneurol.2025.3662

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