黒い宝石のような観賞用トウガラシ ― 「ブラックパール」の魅力:路傍の植物
高円寺の街を歩いていたら、花壇の緑の中にひときわ目を引く“黒い植物”に出会いました。今回ご紹介するのは、観賞用トウガラシの一種「ブラックパール(Black Pearl)」です。
紫黒の葉と光沢のある実
この植物の最大の特徴は、まるでベルベットのように深い紫黒色をした葉と、黒真珠のように艶めく小さな実です。日当たりが良い場所では葉色がより濃く、紫がかった光を帯びて輝きます。夏には紫色の小さな花を咲かせ、その後、丸く光る黒い実を多数つけます。秋が深まるにつれて実は赤く熟し、季節の移ろいを感じさせてくれます。
食用ではなく観賞用
同じトウガラシの仲間ですが、このブラックパールは食用には向いていません。辛みが非常に強く、あくまで観賞を目的として改良された園芸品種です。暑さや乾燥に強く、花壇や鉢植えに植えると手間がかからず長く楽しめます。アメリカ農務省が2006年に新品種として登録して以来、世界中で人気を集めています。
眼科との意外なつながり ―「Capsaicin(カプサイシン)」
さて、トウガラシと聞くと、辛味成分のカプサイシンを思い浮かべる方も多いでしょう。実はこのカプサイシン、神経伝達や痛覚の研究でもよく使われており、眼の分野でも興味深い話題があります。たとえば、角膜や結膜の痛覚を伝える三叉神経の働きを調べる際、動物実験でカプサイシン刺激が利用されることがあります。
また近年では、眼の乾きや灼熱感の一部が「神経の過敏化(neuropathic pain)」によるものとされ、このカプサイシンを応用した神経機能の調節研究も進められています。
つまり、庭先のこの黒い観賞トウガラシは、神経と感覚、そして「痛みの科学」とも小さな縁を持っている植物なのです。
高円寺の花壇で見かけたら
自由が丘の街角や駅前の花壇でも、秋になるとこのブラックパールが彩りを添えています。紫のアゲラタムや赤いサルビアと並ぶと、その黒紫色が全体を引き締める役割を果たします。花壇づくりでは「引き立て役」として非常に優秀な存在です。
手に取ってみたくなるほど美しい実ですが、辛みが強いため小さなお子さんやペットが誤って口にしないよう注意しましょう。
【自由が丘清澤眼科 院長コメント】
「ブラックパール」は、その深い色合いから“瞳の輝き”を思わせる植物です。眼科医として患者さんの瞳を見つめ続けていると、黒の中にも実に多様な色が存在することに気づきます。この植物のように、日差しの角度や環境によって変わる光の反射は、人の眼の虹彩や瞳孔反応にも通じる美しさがあります。自然の色彩を楽しむことは、まさに「眼の健康」にもつながる豊かな時間です。
(写真:自由が丘清澤眼科院長の花壇観察より)



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