新しい「MBCT-Vision」コースがイギリスで開始されます
〜ビジュアルスノウ症候群(VSS)の方のためのマインドフルネス介入〜
ビジュアルスノウ症候群(Visual Snow Syndrome: VSS)でお困りの方に向けて、新しい支援プログラムが始まります。英国オックスフォード大学関係機関である Oxford Mindfulness Foundation が、VSSに特化した MBCT-Vision(マインドフルネスに基づく認知療法:視覚症状特化版) を2026年1月6日からオンラインで開講することを発表しました。
この取り組みは、VSS患者支援団体 Visual Snow Initiative(VSI) と、神経眼科医としてVSS研究を行ってきた Sui Wong(スーイ・ウォン)医師 によって推進されてきたものです。
MBCT-Visionとは何か
MBCT-Vision は、もともとうつ病再発予防のために作られた「マインドフルネス認知療法(MBCT)」を、VSSの症状に合わせて調整した8週間の特別プログラムです。
ウォン医師は、VSS患者さんにこのMBCTを行う前後で 脳のfMRI(機能的MRI) を撮影し、下記のような変化を報告しています。
-
視覚情報を処理する領域の機能変化
-
刺激に過敏に反応しやすい“サリエンスネットワーク”の改善
これらは、VSSで知られる「神経の過剰興奮(dysregulation)」が改善方向に動くことを示す客観的データです。
これまで研究の場でしか受けられなかった方法を、多くの患者さんが自宅から受けられるようにしたのが今回のプログラムです。
本コースの講師は、オックスフォード大学で長年MBCTを教えてきた Christina Surawy(クリスティーナ・サラウェイ)氏。ウォン医師自身も監修に参加し、研究で用いられた手法が正確に反映されています。
これまでのマインドフルネス支援との違い
Visual Snow Initiative とオックスフォードは、すでにアプリ内で利用できる無料の短縮版講座
「Mindfulness for Visual Snow Syndrome」 を公開してきました。
今回の「MBCT-Vision」は以下の点でより本格的です。
-
8週間にわたる体系的なプログラム
-
毎週のオンライン指導を受けながら進められること
-
VSS患者さん自身の意見を取り入れ、日常でも使いやすく設計
初期の無料講座で効果を感じた参加者の「もっと詳しく学びたい」という声を受けて開発されたものです。
プログラムへの参加について
新しく開始された詳細プログラム(有料)
-
8週間のオンラインMBCT-Visionコース
-
VSS向けに特別に調整された内容
(詳細・申込は Oxford Mindfulness の公式ページに掲載)
すでに提供中の無料プログラム
-
Mindfulness for Visual Snow Syndrome(無料)
Oxford Mindfulness アプリから世界中で利用できます。
有料コースは専門講師による本格的な内容ですが、無料版でも基本的なマインドフルネス実践を体験することができます。
このプログラムの意義
VSSは残念ながら「特効薬がない」症状として知られています。しかし、近年では「視覚神経ネットワークの過剰活動」が関係していると考えられ、脳の調整力(ニューロモジュレーション)を高める介入 が注目されています。
MBCT-Vision は、
-
症状の“捉え方”を整え
-
過剰な注意や不安の連鎖を減らし
-
神経ネットワークの働きを改善する可能性がある
という研究データに基づいたアプローチです。
薬ではありませんが、症状との付き合い方を大きく変える手がかりになることが期待されています。
院長コメント
ビジュアルスノウ症候群は、視覚障害というよりも「脳が視覚情報をどのように処理するか」の問題であると理解されています。そのため、薬物治療だけでなく「脳の働きを整える」心理学的手法が有効である可能性が指摘されています。ウォン医師の研究は、VSSが単なる“気のせい”ではなく、脳機能として説明できることを示した点でも非常に重要です。今回のMBCT-Visionは、その科学的知見を一般の患者さんが体験できる形にした取り組みであり、今後の治療選択肢の幅を広げるものと言えます。外国人である日本人には障害もあるでしょうが、まずは無料版で試し、より深い学習を希望される方は有料版を検討してみるのも一つの方法でしょう。
当医院では、保険診療の範囲内で臨床心理士を医療チームに入れてマインドフルネスや認知行動療法などの臨床心理学的な療法も加えた診療を提供しています。次のビデオはそのセッションを担当してくれている小野木先生が紹介してくれたユーチューブ動画です。(当医院がこれそのものを指導している訳ではありません。)後からこのブログに短縮版も紹介してくださるそうです。



コメント