ビジュアルスノウと片頭痛 ― 片頭痛予防薬は役立つのでしょうか?
最近、「ビジュアルスノウ(Visual Snow Syndrome)」という病気が少しずつ知られるようになってきました。暗いところでも明るいところでも、テレビの砂嵐のような細かな点が視界全体に見え続ける状態です。眼科の検査や脳の画像検査では異常が見つからないことが多く、患者さんにとっては非常に不安の大きい症状です。
このビジュアルスノウは、片頭痛を合併している方が多いことが、日本を含めた研究で指摘されています。そこで、「片頭痛を予防する薬を使えば、ビジュアルスノウも良くなるのではないか?」という疑問が自然に生じます。
片頭痛予防薬はどんな場合に試す価値があるのか
結論から言うと、片頭痛が明らかに合併している場合には、片頭痛予防薬を試す合理性があります。特に次のような方です。
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繰り返す拍動性の頭痛がある
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光や音に敏感になり、頭痛で日常生活が妨げられる
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ビジュアルスノウに加えて、片頭痛の診断基準を満たす症状がある
このような場合、日本で比較的使いやすい片頭痛予防薬として、ロメリジン塩酸塩、状況によっては抗てんかん薬(ラモトリギンなど)やトピラマートが検討されることがあります。ロメリジンは日本で長く使われており、副作用の面でも比較的扱いやすい薬です。
大切な「期待値調整」― 正直なお話
ここで非常に大切な点があります。
現在までの研究では、片頭痛予防薬によって頭痛は軽くなっても、ビジュアルスノウそのものが完全に消える例は多くありません。
つまり、
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頭痛や光過敏が楽になることは期待できる
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しかし、視界の「砂嵐」自体は残ることが多い
というのが現実です。この点を事前に理解していただくことが、治療を続ける上でとても重要です。「効かなかった」と落胆するのではなく、「困りごとが少し減った」と評価する視点が必要になります。
眼科外来でまず確認すべきこと(除外診断)
ビジュアルスノウと診断する前に、眼科では次の点を必ず確認します。
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網膜や視神経の病気がないか(眼底検査、OCT)
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視野に異常がないか
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一過性の閃輝暗点や他の神経疾患ではないか
これらを丁寧に除外したうえで、「構造的な異常がない」ことを確認すること自体が、患者さんの安心につながります。
薬だけに頼らない治療の考え方
近年は、薬物療法だけでなく、マインドフルネスなどの心理学的アプローチが注目されています。これは「見え方を消す治療」ではありませんが、症状への過剰な注意や不安を和らげ、生活の質を改善する効果が期待されています。
まとめ
ビジュアルスノウは、まだ原因や決定的な治療法が確立されていない病気です。しかし、片頭痛を合併している場合には、片頭痛予防治療を行うことで、症状全体の負担を軽くできる可能性があります。
大切なのは、「完全に治す」ことだけを目標にせず、少しでも楽に生活できる状態を一緒に目指すことです。気になる症状がある方は、どうぞ遠慮なくご相談ください。



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