新たなH3N2インフルエンザ株と今シーズンの注意点
― ワクチンは効くのか、私たちは何に備えるべきか ―
インフルエンザの季節は毎年やってきますが、今シーズンは少し注意が必要かもしれません。2025~2026年シーズンに向けて、新しいタイプのインフルエンザA(H3N2)ウイルスが世界的に注目されているからです。
このウイルスは「H3N2サブクレードK」と呼ばれ、今年6月、すでにワクチンの配合が決まった後に監視網で確認されました。その後、日本、英国、カナダなどで比較的早い時期から流行と関連して報告されています。
H3N2は、もともと季節性インフルエンザの主要な原因の一つで、過去にも重症化や高齢者の入院・死亡が増えやすいウイルスとして知られてきました。今回のサブクレードKでは、ウイルス表面の「ヘマグルチニン」という部分に複数の変異が加わっており、これがワクチンとの“ずれ”を生む可能性が指摘されています。インフルエンザウイルスが毎年少しずつ姿を変える「抗原ドリフト」は珍しい現象ではありませんが、H3N2の場合は特に警戒が必要とされています。
海外の状況を見ると、日本では例年より早くインフルエンザ流行が宣言され、英国でも「昨年より厳しい冬になる」との警告が出ています。一方、米国では今のところ流行の立ち上がりは典型的な範囲にとどまっているものの、検出されるH3N2の大半がサブクレードKに置き換わりつつあることが報告されています。
さらに懸念されているのが、ワクチン接種率の低下です。今シーズンは、前年に比べて接種数が約7%減少しているとされ、流行の初期に十分な免疫が広がらない可能性があります。ワクチンとウイルスに多少の不一致があったとしても、専門家は「重症化や死亡を防ぐ効果は十分に期待できる」と強調しています。実際、英国の初期データでは、子どもの救急受診を7割前後減らす効果が示されています。
また、ワクチンだけに頼らない対策も重要です。発熱や咳があるときは無理をせず人との接触を減らす、手洗いや咳エチケットを徹底する、といった基本的な感染対策は今シーズンこそ大切です。加えて、発症初期に使う抗インフルエンザ薬は、重症化リスクの高い方にとって心強い手段になります。現在のところ、この新しい株が薬に耐性を示す兆候は報告されていません。
インフルエンザの流行は、複数の要因が重なって強さが決まります。ウイルスの性質、広がり方、そして私たち一人ひとりの備え。今シーズンは「例年通り」で済むかもしれませんが、「例年より厳しくなる」可能性も否定できません。だからこそ、過度に恐れるのではなく、できる対策を着実に行うことが大切だといえるでしょう。
出典
Kate Schweitzer. A New H3N2 Influenza Strain Raises Concerns This Flu Season. JAMA Medical News.
オンライン公開:2025年12月19日
DOI: 10.1001/jama.2025.25205
清澤のコメント
眼科診療でも、発熱や強い全身症状のある患者さんを診る場面は少なくありません。インフルエンザは「目の病気」ではありませんが、全身の健康管理としてとても重要です。ワクチン、基本的な感染対策、そして早めの受診。この3つを意識して、この冬を乗り切っていただければと思います。
追記:今年のインフルエンザ(H3N2)と眼症状の特徴
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アデノウイルスのように「目が主症状」になることは基本的にありません
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眼症状があっても 全身症状が主体
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ワクチン株とのズレが懸念される年でも、
眼科合併症が特別に増えるという確立したデータは現時点ではありません
眼科医として患者さんに伝えるポイント
患者さん向けには、次のような説明が現実的です。
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「インフルエンザでも、軽い充血や目の不快感が出ることはあります」
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「ただし、強い目やに・激しい充血・片眼だけ強く赤い場合は別の感染症の可能性があります」
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「視力が下がる、強い痛みがある場合は、早めに眼科を受診してください」
まとめ(要点)
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✔ インフルエンザでも軽い結膜炎様症状は起こりうる
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✔ 多くは一過性で重症化しない
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✔ はやり目(流行性角結膜炎)とは別物
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✔ 視力低下や強い眼痛を伴う場合は要注意



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