ミトコンドリアの病気は、なぜ「母から子へ」伝わるのか
― レーベル病とヘテロプラスミーの考え方 ―
私たちの体の細胞には、「核」に入っている遺伝子とは別に、ミトコンドリア遺伝子というものがあります。ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作る重要な器官で、そこにも独自の遺伝情報が存在します。
レーベル病(レーベル遺伝性視神経症)は、このミトコンドリア遺伝子の異常によって起こる代表的な病気です。特徴的なのは、遺伝のしかたが一般的な遺伝病(父母から半分ずつ受け継ぐもの)とは異なる点です。
ミトコンドリアは「母からしか受け継がれない」
受精のとき、精子と卵子が合体しますが、ミトコンドリアのほとんどは卵子由来です。精子にもミトコンドリアはありますが、数が非常に少なく、受精後にほぼ消失してしまいます。
そのため、
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ミトコンドリア遺伝子の病気は母親から子どもへ伝わる
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父親が患者でも、子どもには原則として遺伝しない
という特徴があります。
「ヘテロプラスミー」とは何か
ここで重要になるのがヘテロプラスミーという概念です。
これは、1つの細胞の中に「正常なミトコンドリア遺伝子」と「異常なミトコンドリア遺伝子」が混在している状態を指します。
反対に、すべてが同じ遺伝子でそろっている状態を「ホモプラスミー」と呼びます。
多くのレーベル病の保因者(症状のない女性)では、
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正常なミトコンドリア
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異常を持つミトコンドリア
が**混ざった状態(ヘテロプラスミー)**になっています。
なぜ同じ母から生まれても、発症する人としない人がいるのか
卵子が作られる過程では、どのミトコンドリアがどれくらい入るかがランダムに分配されます。これを「ミトコンドリアのボトルネック現象」と呼びます。
その結果、
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異常ミトコンドリアの割合が少ない卵 → 発症しにくい
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異常ミトコンドリアの割合が多い卵 → 発症しやすい
という差が生じます。
つまり、同じ母親から生まれても、子どもごとにリスクが異なるのです。(一説では異常遺伝子が90-95%以上で発症するともいわれています。)
男性に多く、女性にも少数発症する理由
レーベル病は、男性に発症しやすいことで知られています。これはミトコンドリア遺伝子だけでなく、
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男性ホルモン
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神経の脆弱性
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核遺伝子との相互作用
などが関係していると考えられています。
そのため、
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母が保因者 → 息子が発症しやすい
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娘は多くが無症状だが、まれに女性でも発症する
という特徴が生じます。女性の発症例は、異常ミトコンドリアの割合が高い場合や、環境要因(喫煙、栄養、ストレスなど)が重なった場合にみられます。
まとめ:ミトコンドリア遺伝病は「割合」と「条件」で決まる
レーベル病のようなミトコンドリア遺伝病は、
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単純に「遺伝子を持っているかどうか」だけで決まる病気ではありません
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異常ミトコンドリアの割合(ヘテロプラスミー)
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性別や体質、環境要因
が重なって、はじめて発症に至ります。
そのため、保因者であっても一生発症しない人がいる一方で、条件がそろうと突然発症することもあります。この「不確実さ」こそが、ミトコンドリア遺伝病の難しさであり、同時に慎重な説明と理解が必要な理由なのです。
注:現在ミトコンドリアのヘテロプラス三―を測定してもらえる所は存在しないと清澤は理解しています。



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