眼科医療経済等

[No.4400] 「眼科診療におけるAIの現在地と未来図:診断から診療支援まで」日本の眼科1月号特集紹介です

 日本の眼科2026年1号が届きました。今回の特集テーマは「眼科診療におけるAIの現在地と未来図:診断から診療支援まで」です。AI(人工知能)は世界的に注目されている技術であり、眼科診療の現場でもすでに実用段階に入りつつあります。本号では、その全体像が複数の専門分野から分かりやすく紹介されています。

まず総論として、大鹿哲郎先生による「眼科医療におけるAIの現在と未来」では、AIが画像解析や経時変化の解析、言語データ処理を同時に行えるようになったことで、眼科診療の在り方そのものが変わりつつあることが述べられています。診断のばらつきを減らし、医療従事者の負担を軽減し、地域医療の効率化にも貢献するAIは、医師に代わる存在ではなく、医師の判断を支える“知的インフラ”として位置づけられています。今後は、眼底写真やOCT、視野、遺伝情報などを統合して患者さんごとのリスクをより精密に予測する方向に進むとされています。

次に、川崎良先生の「網膜疾患のAI画像診断支援と社会実装」では、糖尿病網膜症のAI診断がすでに検診やスクリーニングで実用化されている現状が紹介されています。単にAIを導入するだけでなく、実際の医療現場でどう運用するかが重要である点も強調されています。また、網膜画像から全身疾患のリスクを推定する「オキュロミクス」という新しい考え方が紹介され、眼科検査が全身の健康管理や予防医療につながる可能性が示されています。

柏木賢治先生による「緑内障:視野解析・構造解析におけるAIの貢献」では、緑内障診療においてAIが特に期待されている理由が述べられています。視野検査と視神経構造の評価は緑内障診療の要ですが、AIの進歩によりその精度と一貫性が向上してきました。高齢化や専門医不足といった社会的課題に対しても、AIが診療を支える重要な役割を果たすことが期待されています。

前眼部診療については、上野勇太先生の「前眼部画像診断とAI」で紹介されています。角膜形状解析による円錐角膜の診断支援や、前眼部OCT、カラー写真を用いた疾患分類など、さまざまな研究が進んでいます。国内で開発された前眼部AI診断支援システムは、近い将来の社会実装が見込まれており、診療の在り方を変える可能性があります。一方で、AIの結果を正しく理解し活用するためには、医師自身の経験と判断が不可欠であることも強調されています。

最後に、三木篤也先生の「AIで変わる眼科診療録」では、診断以外の分野でのAI活用が紹介されています。診療録の入力支援やデータ標準化といった医療インフラ整備は、業務負担の軽減や医療安全の向上につながります。診療サマリーや情報提供書の自動作成など、近い将来に役立つ具体的な仕組みも示されています。

本特集を通して感じられるのは、AIはあくまで道具であり、最終的な判断を行うのは人間であるという一貫した姿勢です。AIと協働しながら、より安全で質の高い眼科医療を提供する時代が、すでに始まっていることを実感させる内容でした。一読を

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