神経眼科

[No.4409] シャルルボネ症候群:両眼失明者が見る幻視

症状

シャルル・ボネ症候群の主な症状は、両眼を失明した人が「実際には存在しないものが見える」ことです。見える内容は実にさまざまで、人や子ども、動物、風景、建物、花模様や幾何学模様などが、はっきりした色や形で現れることもあります。

目の前で色のついたハンカチが揺らぐという人もいます。大切な特徴は、音や声が聞こえることはない点です。また多くの患者さんは、「これは現実ではない」「自分の目のせいで見えている」と理解できており、意識もはっきりしています。このため、妄想や混乱を伴う精神疾患、せん妄、認知症とは異なります。ただし、最初は「自分がおかしくなったのではないか」と強い不安を感じる方が少なくありません。


原因

原因は両岸の視力低下そのものにあります。目の病気で視覚情報が減ると、脳の視覚を担当する部分(視覚中枢)が刺激不足になります。その結果、脳が勝手に活動して映像を作り出し、幻視として感じられると考えられています。これを「視覚の解放現象」と呼びます。

背景となる病気には、加齢黄斑変性、緑内障、網膜色素変性、進行した白内障、脳卒中後の視野障害などがあります。高齢者に多いのは事実ですが、年齢が原因なのではなく、視機能の低下が引き金です。


診断

診断で最も重要なのは丁寧な問診です。

① 両眼の視力や視野が低下している

② 見えるのは映像のみで、幻聴や妄想はない

③ 意識は清明で、認知機能の大きな低下がない

これらがそろえば、シャルル・ボネ症候群が強く疑われます。必要に応じて、脳の病気を除外するために画像検査や神経内科的評価を行うこともあります。認知症に属するものではないことの確定が必要です。


対応・治療

特別な治療薬はありませんが、最も大切なのは説明と安心です。「心の病気ではない」「目が悪くなったことで起こる現象だ」と理解するだけで、不安が軽くなり、症状が気にならなくなる方も多くいます。

日常生活では、部屋を明るくする、視線を動かす、瞬きをする、テレビやラジオをつけて刺激を増やすといった工夫が有効なことがあります。また、白内障手術などで視力が改善すると、幻視が減る場合もあります。どうしても苦痛が強い場合には、専門医と相談しながら対応を検討します。


眼科院長からのまとめ

シャルル・ボネ症候群は、視力低下に伴って脳が起こす自然な反応です。決して珍しいものではなく、恥ずかしがる必要もありません。「見えないものが見える」という体験があれば、一人で悩まず、ぜひ眼科でご相談ください。正しく理解することが、安心への第一歩です。

次に示すのはオリバーサックスの話す有力な動画ですが日本語の声になっていないのが残念。文字を読んであげる必要があります。

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