ビジュアルスノウ症候群と「見え方のクセ」パレイドリア
— 雑然としたものの中に意味を見出しやすい視覚の特徴 —
ビジュアルスノウ症候群(VSS)は、視界全体に細かな砂嵐のようなノイズが見える状態が続く病気です。これに加えて、まぶしさ、残像、ちらつき、暗い所での見えにくさなど、さまざまな視覚の不調を伴うことが知られています。近年、この病気は単に「ノイズが見える」だけでなく、脳での視覚の受け取り方そのものに特徴があるのではないかと考えられるようになってきました。
最近、英語圏メディア(Times Entertainment など)で紹介された研究では、VSSのある人は、そうでない人に比べて、意味のない模様や雑然とした画像の中から「顔のようなもの」を見つけやすい傾向があることが報告されています。これは、視覚心理学で「パレイドリア」と呼ばれる現象に関係します。
この研究が示唆しているのは、VSSでは「視界にノイズが混じる」だけでなく、そのノイズの中から意味を読み取ろうとする脳の働きが、通常より強くなっている可能性です。言い換えると、視覚情報の中の「信号(意味のある情報)」と「ノイズ(意味のない情報)」を分けるバランスが崩れ、ノイズの中にも意味を感じ取りやすくなっているのかもしれません。
この考え方は、VSSを「目の異常」だけで説明しきれない理由を理解する助けになります。多くの患者さんで、眼科検査や画像検査では明らかな異常が見つからない一方、見え方のつらさは確かに存在します。今回の知見は、VSSが脳の視覚処理のクセやバイアスに関係する状態である、という近年の仮説とよく一致しています。
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Increased Susceptibility to the Face Pareidolia Illusion in Visual Snow Syndrome
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論文タイトル(英語)
Saurels BW, Robinson AK, Taubert J. 「Increased Susceptibility to the Face Pareidolia Illusion in Visual Snow Syndrome」
掲載誌: Perception
出版年: 2025(査読論文)
DOI: 10.1177/03010066251387849 -
内容要旨
Visual Snow Syndrome の人は、顔パレイドリア(顔の錯視)に対する感受性が有意に高いことを報告しています。一般対象者に比べ、日常の無関係な画像でも「顔のように見える」と評価する傾向が強く、VSSと顔パレイドリアの関連を示唆する初の行動研究です。
また 片頭痛合併例 ではこの傾向がさらに強まることが示唆されており、皮質過剰興奮や視覚処理メカニズムの異常が両者に共通する可能性が検討されています。 -
研究デザイン
132名の VSS 群と 104名の年齢マッチ対照群を対象に、320枚の自然画像に 0〜100 の「顔に見える度」スコア を付ける課題を実施。VSS 群は一貫して高いスコアを示しました。
臨床の現場では、「視覚の中の信号とノイズの処理の仕方が、少し敏感になっている状態」と説明することで、患者さんがご自身の症状を理解しやすくなる場合があります。「気のせい」ではなく、「脳の情報処理の特徴」として捉えることができる点は、安心材料にもなり得ます。
用語解説:パレイドリア(Pareidolia)とは
パレイドリアとは、雲の形が人の顔に見えたり、壁のシミが動物の顔に見えたりする現象のことです。誰にでも起こるごく普通の知覚現象で、人間の脳が「意味のあるもの(特に顔)」を素早く見つけ出そうとする性質によるものです。今回の研究では、VSSのある人では、このパレイドリア的な知覚がやや起こりやすい可能性が示された、という点が注目されています。
出典
・Times Entertainment ほか英語圏メディアによる最近の研究紹介記事
・ビジュアルスノウ症候群における知覚・行動特性に関する関連研究報告(学術論文ベースの紹介記事)
(※本稿は報道内容を一般向けに整理したものであり、診断や治療の変更を直接示すものではありません)



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