ビジュアルスノー症候群は「目」ではなく「脳のつながり」の病気なのか
― 最新MRI研究が示した新たな手がかり ―
清澤の導入:この論文がVSIからのメールで本日伝えられました。数週間前にも見たような論文ですが、もう一度取り上げます。これは、7テスラの静的MRIを使った研究で、脳内の連結を評価しています。(前回の紹介論文はこの記事末尾参照で総説でした。)
背景
ビジュアルスノー症候群(Visual Snow Syndrome:VSS)は、視野全体に細かな砂嵐のような点が常に見える病気です。目を開けていても閉じていても見え、黒や白、透明と表現されることが多いのが特徴です。さらに、動いたものの残像が残る、光がちらつく、飛蚊症が強いなど、複数の視覚症状を伴うことが少なくありません。
眼科で詳しく調べても、目そのものには異常が見つからないことが多く、患者さんは「気のせい」「心の問題」と言われてしまうこともあります。しかし近年、MRI研究により、VSSは脳の情報処理の問題である可能性が強く示されてきました。
方法
今回紹介する研究では、VSS患者40人と健康な人60人を対象に、7テスラという非常に高性能なMRIを用いて脳を詳しく調べました。
特に注目したのは「安静時機能的MRI」という方法です。これは、何も課題をしていない安静状態で、脳の各部位同士がどの程度“同調して活動しているか”を調べる検査です。
研究者たちは、過去の研究でVSSに関与が疑われてきた脳領域同士の結合の強さを測定し、それを視覚症状の重さや眼球運動の検査結果と比較しました。
結果
その結果、VSSの人では、脳の一部どうしの「つながり方」に特徴的な変化があることが分かりました。
具体的には、頭頂葉にある上縁回という領域と、後頭葉の視覚野との結合が強くなっていました。一方で、記憶や情動に関わる側頭葉の一部や、脳の深い部分(淡蒼球)との結合は弱くなっていました。
興味深いことに、こうした結合の変化は、「見え方のつらさ」や「生活への支障の強さ」と関連していました。また、片頭痛を合併しているかどうかで、この脳の特徴に大きな差はありませんでした。
結論
この研究は、ビジュアルスノー症候群が視覚を中心とした脳ネットワークのバランス異常によって生じている可能性を示しています。
特定の視覚関連領域どうしが過剰につながり、逆に感覚を調整したり統合したりする領域との連携が弱くなることで、常に「ノイズのような見え方」が意識に上ってしまう――そのようなモデルが考えられます。
VSSは決して気のせいではなく、脳の働きとして説明できる病態であることを、科学的に裏付けた重要な研究と言えるでしょう。
出典
Strik M, Clough MJ, Sorley EJ, et al.
Altered functional connectivity strength between structurally and functionally affected brain regions in visual snow syndrome.
Brain Communications, Volume 7, Issue 3, 2025, fcaf171.
DOI: 10.1093/braincomms/fcaf171(オープンアクセス)
眼科医・清澤のコメント
ビジュアルスノー症候群は「目の検査が正常」であるがゆえに、長く理解されにくい病気でした。この研究は、患者さんの訴えが脳機能の変化として客観的に説明できることを示しています。今後、診断や治療法の発展につながることを期待したいと思います。



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