結膜炎・花粉症・ものもらい (結膜疾患)

[No.4517] 春の訪れとともに始まる「花粉シーズン」 ―目のかゆみだけではない花粉症の実害と対策―

◎ 春の訪れとともに始まる「花粉シーズン」

―目のかゆみだけではない花粉症の実害と対策―

毎年、バレンタインデーの頃になると「そろそろ始まりますね」と話題になります。そして今年も、少しずつ花粉症の患者さんが来院され始めました。花粉症による受診の増加は、例年ゴールデンウィーク前頃まで続きます。

日本の春の花粉症の主な原因は、郊外のスギ林から飛来するスギ花粉です。3月を中心に飛散量が増え、4月後半からはヒノキ花粉へと移行します。特に関東地方ではスギ人工林の割合が高く、症状に悩まされる方が多いことが知られています。


■ 花粉症による目の症状とは

花粉症(季節性アレルギー性結膜炎)の代表的な症状には、

・強いかゆみ

・流涙(涙があふれる)

・充血

・目やに

・異物感

などがあります。鼻では、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが生じます。

目のかゆみは特につらく、無意識にこすってしまうことで角膜上皮に傷がつくこともあります。また、コンタクトレンズ装用者では、レンズへの花粉付着や蛋白沈着が症状を悪化させる要因になります。


■ 花粉を「持ち込まない」生活対策

治療と同じくらい重要なのが環境対策です。

  1. 衣類の選択

     ウールやフリースなど毛羽立った素材は花粉が付着しやすいため、表面が滑らかな素材を選びます。

  2. 外出管理

     花粉飛散量の多い日(晴れて風が強い日、雨上がりの翌日など)は不要不急の外出を控えます。

  3. 帰宅時の工夫

     玄関先で衣類を軽くはたき、室内への持ち込みを減らします。

  4. 洗顔・洗眼

     帰宅後に顔を洗い、まつ毛や眼瞼縁についた花粉を取り除きます。

  5. 眼鏡・花粉防止メガネの活用

こうした基本対策を積み重ねることで、症状はかなり軽減します。


■ 薬物治療の基本戦略

治療は症状の強さに応じて段階的に行います。

① 抗アレルギー点眼薬

ヒスタミン受容体拮抗作用や肥満細胞安定化作用をもつ点眼薬が基本です。可能であれば、症状が強くなる前から使用する「初期療法」が効果的です。一般には12月から1月頃に開始することが多いとされています。

② 点鼻薬・内服薬

鼻症状が強い場合は耳鼻科との連携も重要です。第二世代抗ヒスタミン薬は比較的眠気が少なく、日常生活への影響を抑えられます。眼科でも内服薬や点鼻薬を処方することがあります。

③ ステロイド点眼(短期使用)

かゆみや充血が強い場合に、短期間使用します。症状のコントロールに有効ですが、漫然と長期使用することは避けます。


■ ステロイド使用の注意 ― 緑内障リスク

ステロイド点眼は効果の高い治療薬ですが、体質によっては「ステロイド反応性高眼圧症」を起こす方がいます。眼圧上昇が続くと、緑内障性視神経障害に進む可能性があります。

特に、

・緑内障の家族歴がある

・強度近視がある

・若年者

・長期使用となる場合

には慎重な経過観察が必要です。

そのため、ステロイド点眼を使用する際には定期的な眼圧測定が重要です。市販薬を自己判断で長期使用することは勧められません。


■ 花粉症の経済的影響

花粉症は単なる「季節の不快症状」ではありません。睡眠の質の低下や集中力の低下を通じて、仕事や学業の効率に影響します。日本全体では経済的損失が数千億円規模にのぼるという試算もあります。特に受験生や知的労働に従事する方にとっては大きな問題です。


■ 近年の話題:初期療法と免疫療法

初期療法

花粉飛散前から抗アレルギー薬を使用することで、ピーク時の症状を軽減する方法です。

舌下免疫療法

スギ花粉症に対して保険適用があり、数年かけて体質改善を目指します。当院では現在実施しておりませんが、希望される方には対応施設をご案内しています。

免疫療法は長期的視点で症状軽減を目指す治療法の一つです。


■ 最後に

花粉症は「仕方がない」と我慢する病気ではありません。適切な対策と治療により、症状はかなり抑えることができます。

・ステロイドの自己判断使用は避ける

・眼圧チェックを怠らない

・コンタクトレンズは症状に応じて無理をしない

といった基本を守ることが大切です。

春の診療室が賑わうのは、それだけ多くの方が困っている証拠でもあります。早めの対策で、この季節を少しでも快適に過ごしていただければと思います。

花粉症の季節は連休前まで続きます。気になる症状があれば、どうぞ早めにご相談ください。

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