
双子姉妹に同時にみられた「ビジュアルスノウ症候群」;症例報告の紹介
― 遺伝的要因の可能性を示す興味深い症例報告 ―
最近、神経眼科の分野で注目されている病気の一つにビジュアルスノウ症候群(Visual Snow Syndrome)があります。これは、視界に常に「細かい点やちらつき」が見える症状を特徴とする比較的まれな疾患です。テレビ画面のノイズのような細かな粒子が、明るい場所でも暗い場所でも視野全体に見えると表現されることが多く、患者さんにとっては非常に気になる症状です。
ポーランドの眼科雑誌に、双子姉妹に同時にこの症状が見られたという興味深い症例報告が掲載されました。これまでビジュアルスノウ症候群についての研究は少なく、特に一卵性双生児での報告はほとんどないとされています。
ビジュアルスノウ症候群とは
ビジュアルスノウとは、視界全体に小さな光の点がちらつく状態を指します。正式にビジュアルスノウ症候群と診断するためには、
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この症状が3か月以上続くこと
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さらに少なくとも2つ以上の関連症状があること
が必要とされています。
関連症状としては次のようなものがあります。
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まぶしさ(羞明)
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夜間の見えにくさ(夜盲)
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動くものが揺れて見える感覚(オシロプシア)
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残像が長く残る現象(パリノプシア)
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光の閃き(フォトプシア)
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耳鳴り
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飛蚊症や視野の小さな暗点
これらの症状は患者によって組み合わせが異なります。
双子姉妹の症例
今回報告されたのは、ポーランドのワルシャワ医科大学附属病院を受診した双子の姉妹です。二人とも、目を開けていても閉じていても、明るくちらつく点が見えるという同じ主症状を訴えていました。
さらに詳しく調べると、それぞれに追加症状がありました。
姉の症状
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まぶしさ
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夜盲
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物が揺れて見える感じ
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一時的な光の閃き
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残像
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耳鳴り
妹の症状
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残像
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飛蚊症
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視野の小さな欠け
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耳鳴り
このように症状の組み合わせは完全には一致しませんが、基本的な視覚症状は共通していました。
検査では異常が見つからない
二人には詳しい検査が行われました。
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眼科検査
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MRI(脳の画像検査)
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血液検査
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髄液検査
しかし、いずれの検査でも明らかな異常は見つかりませんでした。
これはビジュアルスノウ症候群の特徴でもあります。患者さんは強い症状を感じているのに、一般的な眼科検査では異常が見つからないことが多いのです。そのため、診断がつくまでに複数の医療機関を受診することも珍しくありません。
遺伝との関係はあるのか
今回の報告で注目されたのは、双子姉妹に同時にこの症状が見られた点です。
双子の場合、遺伝的背景が非常に似ているため、この病気に遺伝的な素因がある可能性が示唆されます。もちろん、今回の症例だけで結論が出るわけではありませんが、ビジュアルスノウ症候群の原因を理解するうえで重要なヒントになると考えられています。
現在の研究では、この病気は
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目の病気というより
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脳の視覚情報処理の異常
と関係している可能性が指摘されています。
医療体制の課題
論文の著者らは、もう一つ重要な問題を指摘しています。それは、ビジュアルスノウの患者さんが医療システムの中で診断にたどりつくまでに苦労することが多いという点です。
症状が説明しにくく、検査でも異常が見つからないため、
「異常はありません」と言われてしまうことも少なくありません。
しかし、患者さんにとって症状は現実であり、慢性的に続くため、適切な理解とサポート体制が必要とされています。
神経眼科医清澤からのコメント
ビジュアルスノウ症候群は、まだ原因や治療法が完全には確立されていない比較的新しい概念の病気です。しかし、近年は研究が進み、神経眼科と脳科学の接点にある疾患として注目されています。視界に常にちらつきが見える、残像が長く残るなどの症状が続く場合には、神経眼科的な評価を受けることで診断につながることがあります。患者さんの訴えを丁寧に聞き、理解する姿勢が大切だと感じます。
出典
Stańska W, Torbus AM, Rusztyn P, Maciejewicz P.
Twin sisters with visual snow syndrome.
Klinika Oczna / Acta Ophthalmologica Polonica. 2025;127(2):87-90. DOI:10.5114/ko.2025.152091.



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