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[No.4594] 房咲き水仙;よく見ればこれも水仙ですね。

白い花の春の知らせ ― 水仙と「見ること」の小さな物語

今朝の散歩で、道端の緑の中に白い星のような花がまとまって咲いているのを見つけました。細い葉の間から数輪の花がまとまって咲く姿は、冬から春へ季節が移り変わる頃によく見られる風景です。この花は 水仙(すいせん)、なかでも数輪が一つの茎にまとまって咲く 房咲き水仙 と呼ばれる種類。推薦というと花が下を向き、黄色い花かと思っていましたが、これも水仙だそうです。

水仙はヒガンバナ科スイセン属の植物で、原産地は地中海沿岸といわれています。日本には古く中国を経て伝わり、江戸時代にはすでに庭園植物として親しまれていました。寒い季節にも緑の葉を保ち、冬の終わりから春先にかけて清楚な花を咲かせるため、「春を告げる花」として各地で愛されています。白い花びらの中心に小さな副花冠があり、ほのかに甘い香りを放つのが特徴です。

水仙という名前は中国語の「水仙花」に由来し、水辺に咲く仙人のように清らかな花という意味があります。英語では Narcissus(ナルシサス) と呼ばれます。この名前はギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスに由来しています。彼はあまりにも自分の姿に見とれ、水面に映る自分の顔を見つめ続けた末に花になってしまった、という有名な物語です。ここから「ナルシシズム(自己愛)」という言葉も生まれました。

この神話は、実は「目」や「見ること」とも深い関係があります。人は鏡や水面に映る自分の姿を見て、自分を認識します。眼科医の立場から見ると、「視覚が自己認識の入り口になっている」ということを象徴する話のようにも思えます。もし人が自分の姿を見ることができなかったら、ナルキッソスの物語は生まれなかったかもしれません。

一方で、水仙には少し注意も必要です。球根や葉には リコリン(lycorine) などのアルカロイドが含まれ、誤って食べると吐き気や腹痛を起こすことがあります。ニラやノビルと間違えて食べてしまう事故が、時折ニュースになることもあります。また、切り口の汁が皮膚や目に入ると刺激を感じることがあるため、園芸作業の後は手を洗うことが勧められます。

とはいえ、水仙は冬の庭を明るくしてくれる魅力的な植物です。まだ寒さの残る時期に、凛とした白い花が並んで咲く姿を見ると、春がすぐそこまで来ていることを感じさせてくれます。

日常の道端にも、こうした小さな季節の知らせが隠れています。ふと立ち止まり、花を「見る」こと。その行為自体が、私たちの心を少し豊かにしてくれるのかもしれません。

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