全身病と眼

[No.4618] 花見酒が好きな中高年は知っておきたい…酔っばらうとまぶしく感じるのはなぜ?(日刊ゲンダイ自著記事)

花見酒が好きな中高年は知っておきたい…酔っばらうとまぶしく感じるのはなぜ?

日刊ゲンダイデジタル 公開日:2026/03/20 06:00 更新日:2026/03/20 06:00

 花見の季節がやってきた。東京周辺での今年のソメイヨシノの開花予想は例年より早い3月20日前後とされ、3月下旬には満開を迎える。野外でお酒と肴と親しき人との交流はストレスから心を解放し、軽くしてくれる。しかし、年を取ると明るい花見などの酒席で「酔っぱらうとまぶしさ(羞明)を感じる」という人が少なくない。なぜか?
 佐藤さん(仮名、72歳)は会社の先輩と何年かぶりに痛飲した。昔話と互いの近況に大いに盛り上がったが、目にある異変を感じたという。

「店内の光がひどくまぶしく感じたのです。初めての経験でした。翌日は何ともなかったのですが、その後、お酒を飲むたびに同じようなことが起きる。毎年人間ドックに通っていて『問題なし』と言われてきましたが、脳に異常でもあるのか、と心配になりました」
 たしかに、脳梗塞や脳出血で脳内の視覚野や視覚情報の経路が障害を受けると、光過敏になることがある。実際、一部の脳梗塞や、脳梗塞の前触れである一過性脳虚血発作(TIA)では光過敏の症状が出ることが知られている。ただし、その場合も光過敏単独の症状は少なく、視野欠損やものがゆがんで見える、片側だけ見えづらい、色の見え方の変化、頭痛、めまい、集中力の低下、疲労感などの症状が伴うことが多い。

 しかし、佐藤さんのように「お酒を飲んだときだけ」「普段は問題ない」という場合は、脳の異常というより、アルコールによる瞳孔反応と考える方が説明がつきやすいかもしれない。横浜市立大学医学部客員教授で、「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長が言う。
「目の仕組みから、酔うと光をまぶしく感じるという現象は珍しくありません。ただ、その原因は1つではなく、自律神経、瞳孔反応、網膜機能、中枢神経系の感受性など複数の要因が関与すると考えられています」

 例えば、お酒を飲むと瞳孔の直径は小さくなり、収縮・拡張を調整する自律神経に影響が出ることが明らかになっている。高齢になるとただでさえ瞳孔の調整速度が遅くなるうえ、アルコールによる瞳孔対光反応の遅延、瞳孔径調整の不安定化が加わる。結果、酔っぱらったときに光への調整がつかなくなり明るい場所でまぶしいと感じる。
■軽いドライアイ状態に…
「アルコールは網膜の神経伝達にも影響を与えます。実験研究では、網膜電図(ERG、網膜が光に反応して生じる電気信号を調べる検査)の振幅に変化を与え、視細胞や双極細胞の反応低下をもたらすと報告されています。それは暗順応の遅延、コントラスト感度の低下を招き、網膜の光情報処理能力が落ちて光が散乱して感じられ、まぶしさを強く自覚するようになるのです」

 顔の神経をつかさどる三叉神経は痛みだけでなく羞明にも関わっていて、アルコールはその抑制や興奮のバランスを崩す。光刺激を「不快」「痛み」として処理する。また、お酒を飲むと軽いドライアイ状態になりやすい。利尿作用により全身の水分が減少するからで、涙も減る。逆に涙の蒸発を増加させるからだ。ドライアイになると角膜の表面が涙で保護されず、むき出しとなる。結果、光が乱反射するうえ、神経が刺激を受けやすくなり、まぶしく感じる。
「白内障やドライアイでも羞明症状が生じます。お酒を飲むとその症状が強く出るため、自覚症状のない初期の白内障やドライアイではお酒を飲んだときだけに羞明症状が出ると勘違いする場合もあるかもしれません。また、自覚のない脳梗塞や脳卒中が原因でないとも言いきれない。大事なことは疑問を疑問のままにしないことです。気になる症状があれば主治医に尋ねることです」
 最近は60歳を過ぎても働く人が多いため、自分の体を過信しているケースが少なくない。しかし、加齢と共に確実に肉体は老化している。体の動かし方もお酒との付き合い方も、若い頃とは変える必要がある。それには、加齢により、体を動かす神経の反応が衰えていき、若い頃とは異なる感覚が起こることを自覚し、そのメカニズムを知る努力をすることだ。

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