西田教授が近年精力的に取り組んでこられた再生医療に関する研究の集大成として、英科学誌『Nature』に掲載された画期的な成果をご紹介します。昨日は東京科学大学眼科の新人歓迎会が開催されました。会では、昨年入局した6名の若手医師による、症例報告ではなくリサーチに基づいた研究発表が行われ、その後に大阪大学の西田幸二教授による特別講演を拝聴する機会がありました。
ここでは、私の聴講メモを再構成する形ではなく、彼の論文を紹介いたします。
西田幸二教授の研究グループ(大阪大学)は、ヒトiPS細胞を用いて眼の発生過程を模倣する世界初の二次元培養系「SEAM(Self-formed Ectodermal Autonomous Multi-zone)」の開発に成功しました。このSEAMは、同心円状に広がる4つの帯状構造から構成されており、それぞれが角膜上皮、水晶体、網膜、網膜色素上皮など、眼の主要な構成要素に対応する細胞群を再現しています。
これまでのiPS細胞研究では、網膜など眼の後部組織の誘導には一定の成果がありましたが、角膜や水晶体といった前部組織との同時誘導は困難とされてきました。本研究では、ヒトiPS細胞が自律的に分化し、眼の前後部を含む多様な細胞を同時に形成するSEAM構造の生成が確認されました。
特に、SEAMの第3帯域に現れる細胞群は角膜上皮前駆細胞としての特徴を有しており、これらの細胞を単離・培養することで、機能的な角膜上皮組織の作製にも成功しています。さらに、この人工的に作製された角膜上皮組織を角膜障害モデル動物に移植したところ、視機能の回復が確認されました。
この成果は、ドナー不足や免疫拒絶といった従来の角膜移植における課題を克服し得る、新たな再生医療の可能性を示すものです。加えて、角膜疾患の治療にとどまらず、眼球全体の再生医療や発生メカニズムの理解にも寄与することが期待されています。
本研究は、眼科医療の未来に新たな展望をもたらす重要な一歩であり、今後の臨床応用に向けたさらなる発展が強く望まれています。
出典:
Hayashi R, Ishikawa Y, Sasamoto Y, et al. Co-ordinated ocular development from human iPS cells and recovery of corneal function. Nature. 2016 Mar 17;531(7594):376–380. doi:10.1038/nature17000
ご希望があれば、この内容をブログ記事用に調整したり、図表を用いた説明に発展させることも可能です。
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