ボトックスを眼瞼痙攣に対していつもと同様に投与しても、効果の持続期間や効く強さが異なる場合があります。例えば、ある時は3ヶ月以上効果が持続する一方で、別の時には2ヶ月足らずで効果が切れてしまい、再投与可能な8週間が待ち遠しいということもあります。このような効果の変動には、以下の要因が考えられます。
1. 抗体の形成
ボツリヌス毒素はタンパク質で構成されており、繰り返し投与を受けることで、この毒素に対する抗体が体内で生成される可能性があります。抗体が生成されるとボトックスの効果が弱まることがあります。ただし、最近の研究では抗体の影響は以前ほど重視されていません。もし抗体が影響する場合は、効果が徐々に弱まる傾向が予想されます。
2. 筋肉の適応
ボトックス注射を繰り返すことで筋肉が適応し、効果が弱まることがあります。この適応には、筋肉のアセチルコリン受容体の変化や筋繊維の構成変化が関与していると考えられます。
3. 神経の再生
ボトックスは神経信号をブロックして筋肉の収縮を抑制しますが、時間が経つと新たな神経終末が成長し、再び筋肉に信号を送ることがあります。これが効果の持続期間に影響する可能性があります。
4. 注射技術や投与量の違い
ボトックスの効果は、注射部位の選定、投与量、希釈度など、技術的要因にも大きく影響されます。また、生物学的製剤であるため、同じ50単位のバイアルでも実際に正確な単位量が異なる可能性があります。
5. 個人差
患者さん一人ひとりのその時の生理的特性や免疫反応の違いによって、ボトックスの効果や持続期間に差が生じることがあります。
以上の要因が複合的に作用し、ボトックスの効果の持続期間やその時々の有効期間に個人差が生じると考えられます。
治療を継続する際には、これらの点を考慮しながら、医師と相談して最適な治療計画を立てることが重要です。私は、次回注射の日程をあらかじめ決めるのではなく、患者さんが再投与の必要性を感じられた時にお電話でご連絡いただく方法が良いと考えています。実際、多くの患者さんは症状が再発すると約2週間で急速に悪化すると感じられるようです。そのため、注射の申し込みがあった場合には、できるだけ早く対応できるよう院内のスケジュールを調整し、迅速な治療を心掛けています。また投与量も1バイアル50単位の中でどの程度を実際に使うかを、患者さんが記録したスマイルノートと本人の希望を参考に変えています。
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