眼瞼痙攣

[No.3142] 眼瞼痙攣とは: 脳科学辞典目崎 高広先生の記述から

眼瞼痙攣

今日は、患者さん方のために「眼瞼痙攣とは」を 脳科学辞典の目崎高広先生の記述から抜粋してみます。この単語の現れた歴史的経緯が述べられ、概念の確立は最近のことであったことが窺われます。

眼瞼痙攣 目崎 高広 榊原白鳳病院 脳神経内科

 脳科学辞典:脳科学分野の約1,000個の用語を解説し、無償で公開するサイト。利用者としては脳科学分野で研究活動を行っている、または行おうとしている学生と研究者を主に想定している:~抜粋引用します。
DOI
10.14931/bsd.9356 原稿受付日:2020824日 

担当編集委員:漆谷 真(滋賀医科大学 脳神経内科)

英:blepharospasm 独:Blepharospasmus 仏:blépharospasme

同義語:眼瞼攣縮

 眼瞼痙攣は、眼輪筋を中心とする顔面筋の、通常は不随意収縮によって自由な開閉瞼に支障をきたす局所性ジストニアである。中高年を中心に発症し、女性に多い。「まぶしい」「目を開いていられない」「目を閉じていた方が楽」などの症状が多く、眼前の障害物にぶつかる点が特徴である。治療の第一選択はボツリヌス毒素の局所筋肉内注射であるが、難治例を中心に手術も行われる。

イントロダクション

 眼瞼痙攣 (blepharospasm)は、眼輪筋を中心とする顔面筋運動制御異常(通常は不随意収縮)によって自由な開閉瞼に支障をきたす局所性ジストニアである。医学文献に初めて記載されたのは1870年とされる[1]

  •  Anderson, R.L., Patel, B.C., Holds, J.B., & Jordan, D.R. (1998).
    Blepharospasm: past, present, and future. Ophthalmic plastic and reconstructive surgery, 14(5), 305-17. [PubMed:9783280] [WorldCat]

 

これ以前にもblepharospasmusという語がRombergの教科書に現れるが (1853)、これは片側顔面痙攣の攣縮が眼輪筋に限局する場合を意味していたようである(片側顔面痙攣の攣縮は多くが眼輪筋から始まる)。

 眼瞼痙攣を独立した疾患として詳細に記載したのはHenry Meige(アンリ・メージュ)である(1910)[2]

  • Meige H. (1910)
    Les convulsions de la face. Une forme clinique de convulsion faciale bilatérale et médiane (1). Rev Neurol (Paris)21: 437-443.

 

しかし本疾患が局所性ジストニアとして認知されるには、1976年のMarsdenの報告を待たねばならなかった[3]

3. Paulson, G.W. (1972).
Meige’s syndrome. Dyskinesia of the eyelids and facial muscles. Geriatrics, 27(8), 69-73. [PubMed:5046545] [WorldCat]

 

その一方でこの論文以降、「眼瞼痙攣+口・下顎ジストニア」をMeige症候群とする新たな誤解が(本論文を引用した他者によって)広がり、現在に至っている。Meigeの原典にこのような記載はなく、また、「Meige症候群」としての記載はPaulsonが最初であり(1972年)[4]

  • Paulson, G.W. (1972).
    Meige’s syndrome. Dyskinesia of the eyelids and facial muscles. Geriatrics, 27(8), 69-73. [PubMed:5046545] [WorldCat]

 

ここではこのような誤解を生じていない。現在、Meige症候群とは眼瞼痙攣を主症状とする頭頸部分節性ジストニアを言う[5]

  • LeDoux, M.S. (2009).
    Meige syndrome: what’s in a name? Parkinsonism & related disorders, 15(7), 483-9. [PubMed:19457699] [PMC] [WorldCat] [DOI]

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