今回は少し前のものですが私の敬愛する先輩;若倉雅登先生の出演しているユーチューブ動画を取り上げて紹介してみます。ふんわりした雰囲気が良いですね。
目と心をつなぐ診療──若倉雅登先生の「心療眼科」の取り組み
今回のインタビューでは、井上眼科病院の名誉院長であり、「心療眼科」という分野を切り開いた若倉雅登(わかくら・まさと)先生にお話を伺いました。神経眼科から出発し、「目に異常がないのに見えにくい」といった訴えに苦しむ患者の声に真摯に向き合い、「心療眼科」という新たな概念を日本に根付かせたその歩みと考えが語られました。
神経眼科から始まった道
若倉先生は、もともと一般眼科での研修を経て、「もっと目の奥にある神経の異常をきちんと診たい」と考え、神経眼科の世界に進まれました。20年以上、北里大学の眼科で神経眼科を中心に診療と研究を重ね、その後、井上眼科病院で「神経眼科センター」を立ち上げます。
「心療眼科」という新たな挑戦
眼科では白内障や緑内障といった明確な疾患を手術や治療で対応することが一般的ですが、「まぶしい」「ぼやける」「目がつかれる」といった“目の不調”を訴える患者には、異常が見つからず、「問題なし」とされることも多々あります。こうした“見えにくさ”の背後には、脳や神経、あるいは心の不調が関係していることがあると若倉先生は指摘します。
脳は心と密接に関わる臓器です。心の病として扱われがちな症状の中には、実は視覚情報の処理系のトラブルが背景にあるケースもあり、そのような症状を真剣に診る場が必要だと考え、「心療眼科」という診療領域を立ち上げられたのです。
MRIで“見えない病気”は「ない」ことになるのか?
「脳MRIでは異常なし」とされても、視覚情報を伝える神経のネットワークの中で信号処理に障害が起きていれば、患者は確かに“見えづらい”と感じます。ところが、現代医学では、そのような「画像に写らない不具合」は評価が難しいのが実情です。
若倉先生は「画像に映らないからといって病気がないとは言えない。現代の医学が追いついていないだけ。将来、今は見えない問題も明確に見えるようになる可能性がある」と語ります。200年前には精神疾患が“悪魔憑き”と誤解されていたように、今もまた医学の限界によって見過ごされている病態があるのです。
「証明」より「理解」が患者を救う
多くの医師が、「画像で証拠を見せて」と求めます。しかし、現在の科学では十分に可視化できない症状もあります。そうした時、「理解ある医師が患者の話に耳を傾けること」が何よりの救いになります。若倉先生は、「完治できなくても、患者の不安や孤独に寄り添うだけで救われる人が大勢いる」と力強く語ります。
相談できる場所の案内
若倉先生が代表理事を務めるNPO法人「目と心の健康相談室」では、こうした“原因不明の見えにくさ”や心の悩みを抱える方々の相談を受け付けています。医療の限界を超えて「まず話を聞く」という姿勢で、悩める人の支えになっているこの取り組みは、真に患者本位の医療の実践といえるでしょう。
【問い合わせ先】
NPO法人 目と心の健康相談室
電話:042-719-6230
このような活動を通じて、「見えにくさ」に苦しむ多くの患者さんが救われており、今後も心療眼科の重要性は高まっていくことでしょう。目に現れた不調が、実は“脳”や“心”に関わるものだとしたら、私たち医療者の関心の持ち方も変えていく必要があるのではないでしょうか。
コメント