白内障

[No.3679] 神経眼科勉強会の予習です

神経眼科勉強会@慈恵医科大

演題1.「多汗症治療薬使用に関連した両眼瞳孔散大の1例」

この症例は、抗コリン作用を持つ多汗症治療薬の使用により、両眼の瞳孔散大が出現したものであろう。副交感神経系は瞳孔括約筋を支配しており、抗コリン薬によってこの機能が抑制されると瞳孔散大が生じる。

抗コリン作用を有する代表的な薬剤として、経口薬のプロパンテリン、外用薬のグリコピロニウムやオキシブチニンがある。これらの薬剤が全身に作用したり、皮膚から吸収されて瞳孔に影響することがある。特に注意すべきは、点眼薬ではなく経口あるいは外用の皮膚製剤が原因となる可能性がある点である。これは一般眼科医にとって見落としがちな点であり、薬剤歴の聴取が重要である。

また、片側性の散瞳であればAdie瞳孔や第三脳神経麻痺との鑑別が必要であるが、両側性であれば薬剤性の可能性が高くなる。診察では瞳孔反応(対光反射、近見反応)の評価が不可欠であり、点眼薬による可逆性テスト(0.1%ピロカルピン)を行うと診断に有用であろう。

神経眼科的には、原因不明の両側瞳孔散大に遭遇した際、薬剤性を疑って服用・外用歴を丁寧に確認すること、眼科的には薬剤の中止や切り替えによって症状が改善するかの経過観察が重要となる。


演題2.「上斜筋炎を伴った眼部帯状疱疹の2例」

帯状疱疹ウイルス(VZV)が眼神経に再活性化した場合、眼帯状疱疹(HZO)となり、皮膚所見のみならず眼筋の障害を伴うことがある。本例では、特に稀な滑車神経麻痺と上斜筋自体の炎症(ミオパチー)による眼球運動障害がみられたとしている。

滑車神経は外眼筋の内で上斜筋のみを支配し、障害されると特徴的な垂直性の複視(特に下方視時)をきたす。VZVによる神経炎が原因となることがあり、また上斜筋自体が炎症を起こす外眼筋ミオパチーとしてMRIで描出されることもある。

眼科医が帯状疱疹を診た際、皮膚所見だけでなく、眼球運動や複視の有無を必ず確認することが望ましい。治療としては、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル)に加え、炎症抑制のためにステロイドを投与することが多い。

神経眼科的には、症状が強い場合や画像で明らかな筋炎がある場合は、MRIのSTIRや造影T1撮影を行い、鑑別に役立てる。治療効果の評価にも重要である。稀ではあるが、注意深い観察と早期介入が後遺症を軽減する鍵となる。


演題3.「視力・視野の改善が得られた両側後頭葉梗塞の1例」

後頭葉は一次視覚野を含み、左右の後大脳動脈(PCA)の支配をそれぞれが受けている。この領域(左右広大脳動脈)に左右同時に梗塞が起こると、両側同名半盲や皮質盲などの視覚障害を呈するが、椎骨動脈領域の虚血が回復する家庭では、本症例のように視野・視力が左右量販視野で回復する場合があると説明できる。

その理由として、梗塞が完全な壊死に至らずペナンブラとして可逆性虚血であった可能性がある。脳底動脈系の狭窄や一過性の循環障害が両側PCAに同時に影響を与えたことが考えられる。再灌流による機能回復は、DWIと灌流画像(PWI)のミスマッチとして捉えられることもあり、SPECTでの可逆的低灌流の証明も有効である。

一般眼科医が両眼性の急性視力障害に遭遇した場合、眼に異常がなく、特に視野に同名性の欠損がある場合は、直ちに中枢性障害を疑い、画像診断を含む神経内科的評価を依頼すべきである。脳梗塞の時間依存性の治療可能性を念頭に置いた迅速な対応が必要である。


演題4.「視神経の蛇行と耳側視野障害を来した1例」

視神経の蛇行(tortuosity)は通常無症候性だが、走行の異常が視神経線維の圧迫や牽引を生じ、限局的な視野障害を来すことがある。特に鼻側網膜(=耳側視野)に対応する線維が影響を受けると、耳側視野障害として現れる。

このような症例では、OCTにて神経線維層の局所的菲薄化や視野検査での感度低下がみられることがある。また、MRIや眼窩CTで視神経の走行異常を確認することで、構造異常との対応を取ることが可能である。

類似の所見は傾斜乳頭症候群(TDS)や高度近視眼でも報告されており、正常バリエーションと病的意義の線引きが重要である。

神経眼科医としては、視野異常が構造的異常と一致するかを画像と視機能検査で慎重に評価し、進行の有無や視力への影響をモニターする。一般眼科医は、異常所見を認めた場合、傾斜乳頭症候群(TDS)や腫瘍などとの鑑別のため、神経眼科的評価を勧めるべきである。


演題5.「亜急性両眼視神経萎縮の症例」

数週間から数ヶ月単位で進行する両眼視神経萎縮は、さまざまな疾患によって生じ得る。重要なのは可逆的要因の早期発見と、進行性疾患の見逃しを防ぐことである。

中毒性・栄養欠乏性視神経症では、B群ビタミン欠乏やアルコール、タバコの影響が中心で、早期のビタミン補充で改善が可能なこともある。NMOSDやMOG抗体関連疾患では、抗体検査と髄液検査が診断に有用であり、視神経炎の既往がある場合に特に疑われる。

圧迫性疾患では、視交叉や視神経管部の腫瘍が原因となるため、MRIの評価が不可欠である。ミトコンドリア病(Leber病など)では、若年男性に多く、遺伝歴や母系の病歴の確認が重要となる。

視神経萎縮が進行する前に、視力・視野・OCT・VEP・MRIを駆使して早期に病因を同定することが、視機能の保全につながる。眼科医は、経過観察にとどまらず、原因精査のために他科と連携しながら積極的に検査を進める姿勢が求められる。

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予習としてはこの様なところでしょうか?清澤

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