朝の街角に彩りを添える「フユサンゴ」
――小さな実が語る植物と目の健康の不思議なつながり
朝の高円寺エトワール通り商店街を駅に向かう途中、ある鮮やかなオレンジ色の実をつけた植物に目を引かれました。足元には「酔い酔い Yoi-Yoi」とユーモラスな2階の居酒屋の看板。その看板を縁取るように枝を広げていたのが、「フユサンゴ(冬珊瑚)」という植物です。
可愛らしい実をつけるフユサンゴとは?
フユサンゴはナス科ナス属の植物で、学名を Solanum pseudocapsicum といいます。原産地は南米ですが、日本では鉢植えや庭木、店舗の装飾用として広く親しまれています。白く可憐な花を咲かせた後、トマトに似た赤やオレンジの丸い実をつけるのが特徴で、ちょうど今の時期から冬にかけて鮮やかに色づいていきます。
葉は細長くて濃い緑色、どこか繊細な印象を与えますが、実の存在感は抜群。特に殺風景になりがちな冬の街角に、まるで小さな珊瑚のような彩りを添えてくれます。
実は「有毒」!注意も必要
この実、一見美味しそうに見えますが、残念ながら食べることはできません。フユサンゴの果実にはアルカロイド系の有毒成分(ソラニン、ソラニジン)が含まれており、誤って口にすると吐き気や腹痛を引き起こす可能性があります。小さなお子さんやペットがいるご家庭では、置き場所や管理に十分注意が必要です。
触れるだけであれば問題はありませんが、果汁が傷口に入ったり、目に入ったりすることがないよう注意しましょう。
ナス科植物と眼科医療の意外なつながり
「ナス科」と聞いてピンとくる方もいらっしゃるかもしれませんが、ナス科植物は私たちの生活に広く関わっています。食用のナス、トマト、ジャガイモもその仲間です。
実は、眼科の現場でもナス科植物由来の成分が活躍しています。代表的なのが「ベラドンナ(Atropa belladonna)」という植物。この植物に含まれるアトロピンという成分は、散瞳薬として使用されており、特に小児の屈折検査(調節麻痺検査)や近視進行抑制の治療に使われています。
フユサンゴ自体にはアトロピンは含まれていませんが、ナス科という分類的なつながりを通して、植物と眼科医療の不思議な関係に思いを巡らせる良いきっかけになります。
植物がつなぐ医療と生活
眼科医院の玄関や待合室にも、こうした植物を飾ることで患者さんの緊張を和らげたり、ちょっとした話題提供になったりします。「この植物はナスの仲間なんですよ。目薬に使われる植物も同じ科なんです」といった会話が、医師と患者の間の距離をぐっと縮めてくれることもあります。
おわりに
フユサンゴは、その美しい実を通じて、私たちに自然の力と医療のつながりを静かに語りかけてくれます。目に優しい街づくり、心に残る風景づくりの一端を担う存在として、こうした植物に目を向けることも、医療者にとって意味のある営みなのかもしれません。
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