小学生のアトピー性皮膚炎と目の健康 ― 定期的な眼科受診のすすめ
アトピー性皮膚炎は小学生にもよく見られる慢性的な皮膚疾患です。皮膚のかゆみや湿疹だけでなく、実は「目」にも関わる症状を引き起こすことがあります。今回は、アトピー性皮膚炎のお子さんに見られやすい目の症状と、その対策についてご説明します。
アトピー性皮膚炎と目の症状
アトピー性皮膚炎では、アレルギー体質や慢性的な炎症が背景にあるため、以下のような目の病気が起こりやすいことが知られています。
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アトピー性角結膜炎
目の充血、かゆみ、涙目が続き、重症化すると角膜(黒目の表面)が濁って視力低下につながります。 -
白内障(特に後嚢下白内障)
大人に多い病気と思われがちですが、アトピー性皮膚炎の方では若い年齢から白内障が生じることがあります。強い目のこすりや炎症が関与すると考えられています。 -
網膜剥離
アトピー性皮膚炎のお子さんや若者では、激しい目のこすりや眼圧の急激な変化が原因で網膜剥離が起こることがあります。急に視界の一部が欠けたり、黒い影が広がるような症状があれば、緊急の対応が必要です。
日常生活での工夫
お子さんが快適に過ごすためには、皮膚と目の両方を意識したケアが大切です。
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皮膚の基本ケア
保湿には刺激の少ない白色ワセリンを中心に用いることが推奨されます。ステロイド外用薬は必要最小限にとどめ、皮膚科の先生の指導のもとに使うと安心です。 -
目をこすらない習慣づけ
かゆみがあっても、強くこすると白内障や網膜剥離のリスクが高まります。冷やしたタオルで目の周りをそっと押さえるなど、代わりの方法を覚えておくと良いでしょう。 -
生活環境の工夫
ハウスダストやダニ、花粉などのアレルゲンを減らすことも重要です。寝具の洗濯や部屋の換気をこまめに行いましょう。
定期的な眼科受診の重要性
アトピー性皮膚炎に伴う目の病気は、初期には症状が出にくい場合もあります。そのため「見えているから大丈夫」と油断せず、4か月に1回程度の定期的な眼科受診をおすすめします。
受診時には次のようなチェックを行います。
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視力検査
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眼圧測定
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眼底検査(白内障や網膜の状態を確認)
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必要に応じてOCT(光干渉断層計)による詳細な網膜検査
これらの検査により、白内障の早期発見や網膜剥離の前触れを見逃さずに済みます。
まとめ
アトピー性皮膚炎をもつ小学生のお子さんは、皮膚だけでなく「目の健康」にも注意が必要です。角結膜炎や白内障、網膜剥離といった病気を予防・早期発見するために、日常のケアに加えて、4か月ごとの定期的な眼科受診を習慣にしましょう。
当院では、皮膚科と連携しながらお子さんの全身の健康を支える診療を心がけています。お子さんの「見える力」を守るために、一緒に取り組んでいきましょう。
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