白内障

[No.3909] コロナ発生から5年:医療の記憶と、いま振り返る9月

コロナ発生から5年:医療の記憶と、いま振り返る9月

新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の世界的拡大から5年が経ちました。最初期に異変に気づき、SNSで同僚に警鐘を鳴らした中国・武漢の眼科医、李文亮(Li Wenliang)医師は、当局の圧力に晒されながらも警告を続け、悲しくも感染し他界しました。その行動は、医療者の良心と情報公開の重要性を今も象徴しています。

その後、感染は断続的に波を繰り返し、国境を越える人の移動は停止、社会生活と経済活動も大きく停滞しました。日本では2020年4月7日に最初の緊急事態宣言が発出され、5月25日に全国で解除されました。しかし医療現場は elective(予定)医療の制限、防護具の慢性的な不足、医療スタッフの感染や離職による疲弊に直面しました。


医療への経済支援:時期と内容

厳しい状況への対応として、国や自治体から医療機関への支援が次々と打ち出されました。

  • 持続化給付金(中小法人・医療法人・個人事業主向け)

    申請開始は2020年5月1日で、受付は2021年1月15日まで行われました。給付は、申請後通常約2週間で指定口座へ振込とされ、医療法人や個人事業者も対象でした Medisea(メディシー) | 成功確率を最大化するクリニック開業+8起業・創業・資金調達の創業手帳+8経済産業省+8経済産業省

  • 感染防止対策支援金

    「新型コロナ疑い患者を診療する医療機関」へ支給されるもので、2020年4月1日〜2021年3月31日に発生した感染防止関連経費が補助対象でした。病床規模に応じ上限額は3000万円、必要に応じてさらに加算される仕組みでした 日本医師会

  • 診療報酬の概算前払

    資金繰り支援のため、2020年6月下旬の支払い分(5月診療分)に概算前払いが実施され、7月下旬に精算される形式で提供されました バイエ・アマルフィ+1

  • 従事者慰労金

    医療機関に勤務し、コロナ患者対応に従事した職員には、非課税の慰労金(通常は20万円、受け入れ機関外は10万円など)が支給されました 日本医師会

このような支援により、つなぎ資金が確保され、診療体制の維持や医療従事者へのケアが一定程度保たれました。


私自身の経験と所感

当時、私も東京医科歯科大学にて週に一度の神経眼科外来を担当していました。しかし、「除外外来制限」により院外医師の立ち入りが厳しく制限され、やむなく撤退。そして臨床教授としての役職更新も見送りました。この決断は、まさに現場の状況が一変した証であり、医療と自分自身の関わり方を深く問い直すきっかけとなりました。


9月という季節の意味

日本では「9月」が感染の区切りともなる重要なタイミングでした。特に2021年、デルタ株流行の波が7~9月にかけてピークを迎え、9月も重症者の増加が続きました。夏休み明けの学校再開や外出増加、屋内滞在の長期化などが重なり、呼吸器感染が広がりやすい状況が整ったためです。医療現場では再び緊張が走った季節として記憶に刻まれています クラウド型電子カルテCLIUS+1


社会の落ち着きと日常の回復

ワクチン接種の進展、ウイルスの性状変化、医療対応力の向上により、2023年5月8日に日本は感染症法上でCOVID‑19を「5類相当」に移行しました。以降、行動制限は段階的に解除され、社会と医療は通常運転へと戻りました。2023年夏~秋には、日常の感覚をほぼ取り戻せたように思います Medisea(メディシー) | 成功確率を最大化するクリニック開業税理士法人テラス


眼科視点から見たCOVID-19と未来へ

発生初期には「結膜充血」や「結膜炎」が眼科医の間でも注目されました。報告頻度には幅がありますが、現在はCOVID‑19特有の眼合併症は稀とされています。それでも、「発熱+結膜炎」のような組み合わせには注意し、院内動線や検体対応などへの配慮は続けています 日本医師会


教訓とこれからの備え

この5年で私が得た最大の教訓は、「不確実性を前提に、情報を更新し続ける姿勢こそ、信頼を築く基盤である」ということです。推奨や対応は常に変わり得ると認め、その理由と限界を伝える姿勢が重要です。

また、感染対策は「多層防御」が鍵です。ワクチン、手洗い、換気、マスクなど、複数の防護策を重ねることで安全性は飛躍的に高まります。

COVID-19は季節性インフルエンザやRSVとともに、呼吸器感染症の一種として共存する見通しです。特に9月や冬季は注意の必要な季節です。外来では以下を改めてご案内しています:

  1. 秋のワクチン接種計画

  2. 発熱・呼吸器症状時の早期受診

  3. 慢性疾患管理(睡眠・栄養・休養含む)

  4. 高齢者や基礎疾患を持つご家族への配慮

失われた命を悼み、医療現場を支えた仲間や地域の皆さまへの深い感謝を胸に、これからも「地域の目の健康」を守り続けていきたいと思います。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。