他院で行ったICL(眼内コンタクトレンズ)をその後に抜去した後も異物感が続くのはなぜ?
― 患者さんからの質問と院長の回答 ― (眼内ICLはこのように手で扱えるものではありませんが。。)
■ 患者さんからの質問
ICLをマイナス4Dくらいの視力で挿入する手術を受けましたが、術後に“眼がしら”に異物感が残りました。結局ICLは抜去しましたが、異物感は消えていません。
矯正視力は良好で、眼底や角膜、水晶体にも異常はありません。涙液メニスカスは低めですが角膜に傷はありません。
現在、ヒアレイン・レバミピド点眼・サンコバなど使用していますが、眼科でさらにできる治療はありますか?
■ 院長の回答
ICL挿入後に異物感が出て、抜去しても完全には消えないというケースは、臨床でもときどき経験します。
角膜や眼底に異常がなく視力も良好であるにもかかわらず不快感が続くと、「どこが原因なのか」と不安に思われるのは当然です。
実際には、角膜に傷がなくても“不快感”が生じる要因は複数あります。その代表的なものと、今後検討できる治療を整理してご説明します。
■ 原因として考えられるポイント
① 涙液メニスカス低下によるドライアイ
ICL手術前後の角膜操作や炎症で、涙の量・質が一時的に低下することがあります。
特に**鼻側(眼がしら)**は涙の流れの変化に敏感で、異物感として自覚しやすい部位です。
② 軽度の結膜弛緩症
結膜がわずかにたるむだけでも「異物が触れる感じ」が出ます。
涙液の流れが邪魔されると不快感が続きます。
③ マイボーム腺機能不全(MGD)
涙の油層が薄くなると乾燥が進み、瞬きのたびにゴロゴロとした感覚が起こります。
④ 角膜知覚過敏(ニューロパチックアイペイン軽症型)
角膜に問題がなくても、手術をきっかけに「知覚が敏感」になる状態があります。
外見の異常はなくとも違和感が残ることがあります。
⑤ 眼瞼縁の軽度の内反・睫毛の当たり
細いまつげの当たりが原因のこともあり、顕微鏡検査で初めて気づくことがあります。
■ 現在の点眼治療の妥当性
- ヒアレイン
角膜表面の保護に有効で、涙液メニスカス低下には理にかなった治療です。
- レバミピド(ムコスタ点眼)
涙の粘液層を増やし、“乾きによる異物感” に非常に適合します。
- サンコバ
角膜知覚の修復を助け、疲れ眼や軽度の神経性不快感には有益です。
→ いずれも適切であり、継続する価値があります。
■ 追加で検討できる治療・対応
現在の治療が正しい方向であることを前提に、「次の一手」として考えられるものをご紹介します。
① 涙点プラグ(プラグ挿入・液体コラーゲンプラグ)
涙を逃がさずに保つ方法で、涙液メニスカスの低下には特に有効です。
シリコーンプラグやキープティアなどがあります。
② マイボーム腺治療
- 温罨法(ホットアイマスク)
- まつげ周囲の洗浄
- 脂質分泌を促すジクアホソル(ジクアス)点眼
- IPL(可能な施設)
MGDは症状の原因として非常に多いため、積極的に治療すると改善が期待できます。
③ 角膜知覚過敏への治療
傷がなくても不快感だけが続く場合はこの可能性があります。
- サンコバ継続
- メチコバール内服
- 低濃度ステロイド短期使用(医師判断)
などが候補です。
④ 結膜弛緩症の再評価
軽度だと見逃されることもあるため、必要に応じて再検査します。
手術治療で改善する場合もあります。
⑤ 生活面の工夫
- 空調の風を避ける
- スマホ・PC使用時の瞬き低下に注意
- 就寝中の部屋の加湿
- コンタクトレンズ使用の一時中止
これらも症状改善には大変有効です。
■ まとめ
ICL抜去後も異物感が続く場合、角膜や眼底の異常がなくても 涙液量の低下、マイボーム腺機能不全、結膜の軽度の変化、知覚過敏 など、目に見えにくい要因が原因のことが多くあります。
現在の
ヒアレイン
レバミピド
サンコバ
という治療内容は非常に適切な選択で、引き続き有効です。
さらに改善を目指す場合は、
涙点プラグ、MGD治療、知覚過敏の治療、結膜弛緩症の再評価
などを段階的に検討していくことができます。
原因は複数が重なっていることもあるため、慌てず、目の状態に合わせて治療を積み重ねていくことが大切です。



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