まぶたの縁に黄色い脂が見える?
― マイボーム腺梗塞とその治療 ―
鏡を見たときに、まぶたの縁に黄色っぽい脂のかたまりが、ポツッと膨らんで見えることはありませんか。痛みはほとんどないものの、目がゴロゴロする、乾く、かすんで見えるといった不快感を伴うことがあり、気になって眼科を受診される方が少なくありません。この所見は「マイボーム腺梗塞」と呼ばれる状態です。
マイボーム腺は、上下のまぶたの縁に並んで存在する脂の腺で、涙の表面に油の膜を作り、涙が蒸発するのを防ぐ大切な役割を担っています。ところが、この腺の出口が詰まると、脂が外にうまく出られなくなり、出口の部分に黄色から黄白色の脂がたまって、盛り上がって見えるようになります。これがマイボーム腺梗塞です。
この詰まりが起こる原因は一つではありません。加齢に伴う変化、長時間のスマートフォンやパソコン作業による瞬きの減少、ドライアイの存在、化粧や洗顔での汚れの残りなどが関係していると考えられています。特に、マイボーム腺から分泌される脂の性状が変化して硬くなると、出口がふさがれやすくなります。
この状態を放置すると、マイボーム腺の働きが徐々に低下し、目の乾きや異物感、まぶたの重さ、見え方のかすみといった症状が出やすくなります。さらに進行すると、脂がたまって炎症を起こし、「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」と呼ばれるしこりができることもあります。
治療の基本となるのは、「温めて出す」ことです。マイボーム腺梗塞の治療で最も重要なのが、温罨法と呼ばれる方法です。蒸しタオルや市販のホットアイマスクなどで、まぶたを温めることで、固くなった脂が溶けやすくなり、マイボーム腺の出口が開きやすくなります。1回5〜10分程度、1日1〜2回を目安に、「少し熱いかな」と感じる程度で行うのが理想です。ただし、やけどには十分注意が必要です。
温めた後は、まぶたの縁を清潔に保つことも大切です。専用の洗浄剤や、医師の指導に基づいた方法で、ゴシゴシこすらず、やさしく汚れを落とすことがポイントになります。
症状が強い場合や、自宅でのケアだけでは改善が乏しい場合には、眼科でマイボーム腺を圧迫して中の脂を出す処置を行ったり、ドライアイ用の点眼薬や、炎症を抑える点眼薬・内服薬を組み合わせて治療を行います。
なお、まぶたの縁に見える黄色い脂のかたまりの先端が、つるっとした膜のように見えることがあります。これは正常な構造ではなく、マイボーム腺の中で脂が滞留し、濃縮・変性した結果生じたものです。本来はさらっとした油が、瞬きに合わせて涙の表面に広がりますが、梗塞が起こると脂が固まりやすくなり、出口にたまります。そこに酸化した脂質や角化した上皮、涙に含まれる蛋白成分などが混ざることで、薄い皮膜のような構造ができ、光沢のある「膜」に見えるのです。眼科の診察では、圧迫するとこの膜が破れ、歯磨き粉状やバター状の内容物が出てくる所見がよく確認されます。
このような変化は、慢性的な炎症や脂質の変性による病的な状態であり、放置するとマイボーム腺の萎縮や、蒸発しやすいタイプのドライアイ、眼瞼縁炎の長期化につながることがあります。
最後に、院長として一言お伝えします。マイボーム腺梗塞は、「ちょっとした脂の詰まり」に見えるかもしれませんが、実際にはドライアイや目の不快症状の大きな原因になります。温罨法は地味に感じられるかもしれませんが、最も安全で効果的な治療です。症状が軽いうちから、毎日の目のケアとして習慣化することをお勧めします。まぶたの縁の変化が気になる場合は、どうぞ早めに眼科にご相談ください。



コメント