結膜炎・花粉症・ものもらい (結膜疾患)

[No.4495] 3月頃から増える「黄砂による目・鼻の不調」―結膜炎と鼻炎をどう説明するか

3月頃から増える「黄砂による目・鼻の不調」―結膜炎と鼻炎をどう説明するか

春先に中国内陸(ゴビ砂漠・黄土高原など)から巻き上がった砂塵が偏西風で日本へ飛来する現象が黄砂です。黄砂は“砂そのもの”に加えて、大気汚染物質(硫酸塩・硝酸塩など)や微生物が付着していることがあり、目や鼻の粘膜を刺激して症状を起こしたり、花粉症など既存のアレルギー症状を悪化させることがあります。環境省の資料でも、目のかゆみ・結膜炎、鼻水・くしゃみなどとの関連がまとめられています。

1) 症状:眼は「かゆみ」より「流涙・異物感」も多い

患者さんが訴えやすいのは、充血、涙が増える、ゴロゴロする(異物感)、目やに、まぶたの重さです。典型的な花粉症のように強い“かゆみ”が前面に出る人もいますが、黄砂では「かゆみは強くないのに涙と異物感がつらい」というパターンもよく見ます。実際、福岡での研究では、急性結膜炎患者の洗眼液から黄砂粒子が検出され、臨床所見との関連が検討されています。

鼻は、くしゃみ、透明な鼻水、鼻づまりが中心です。ここで重要なのが、俗に「黄砂アレルギー」と呼ばれていても、毎回がIgE型の“抗原抗体反応としてのアレルギー”とは限らず、刺激・過敏による非アレルギー性鼻炎(血管運動性鼻炎など)として説明できる例があることです。

2) 診断:カギは「飛散日との連動」+「除外」

眼(結膜炎)

診察では、結膜充血、眼脂の性状、乳頭・濾胞、角膜上皮障害の有無(フルオレセイン染色)を確認します。痛みが強い、視力低下、角膜混濁、強い眼脂がある場合は、単なる刺激性結膜炎ではなく感染性角結膜炎などの鑑別が必要です。

鼻(鼻炎)

黄砂飛散日(または翌日)に増悪し、少ない日は軽くなる、発熱や膿性鼻汁が乏しい、アレルギー検査で原因抗原が同定できない、鼻汁好酸球が目立たない――この組み合わせなら、血管運動性鼻炎を含む非アレルギー性鼻炎として整合的です(ご提示文)。一方で、スギ花粉時期と重なるため「花粉症+黄砂(刺激)」の合併も多く、症状が強い場合は耳鼻科での評価も勧めます。

3) 治療:基本は“洗い流す+炎症を抑える”(対症療法)

眼の治療

  • まずは洗眼・人工涙液で“物理的に流す”。黄砂の日は点眼回数を増やす。

  • かゆみがある/アレルギー体質なら、抗アレルギー点眼(抗ヒスタミン/メディエーター遊離抑制など)を併用。

  • 炎症が強い場合は、短期のステロイド点眼を検討(ただし自己判断は禁物、眼圧上昇や感染悪化に注意)。

  • コンタクトは症状が落ち着くまで中止(レンズに付着した粒子で刺激が増えます)。

鼻の治療(一般的な方針)

  • 生理食塩水で鼻洗浄(刺激物を減らす)。

  • 鼻噴霧用ステロイドは、アレルギー性でも非アレルギー性でも“鼻粘膜の炎症・過敏”を抑える柱になりやすい。

  • 水様性鼻汁が主体なら、状況により抗コリン薬点鼻(耳鼻科領域)などを選択することもあります。

4) 予防:黄砂の日は「曝露を減らす」が最強

  • 予報を見て、外出や換気を工夫(窓を長時間開けない)。

  • 外出時はマスク+眼鏡(可能なら花粉症用ゴーグル)で目鼻の曝露を減らす。

  • 帰宅後は洗顔・洗眼(こすらない)・うがい・シャワーで付着を落とす。

  • 室内は空気清浄機を活用。

最後に強調したいのは、「黄砂=すべてがアレルギー」ではなく、①刺激性(物理・化学)で起きる症状、②花粉症など既存のアレルギーの増悪、③その両方、が混在する点です。症状の型(かゆみ優位か、流涙・異物感優位か)を丁寧に聞き分け、眼は角膜障害の有無を確認し、鼻は必要に応じて耳鼻科と連携すると、患者さんの納得感も治療成績も上がります。

【参考文献・資料】

・環境省「黄砂とその健康影響について(小冊子)」

・Acute conjunctivitisと黄砂粒子の関連(福岡の臨床研究)

・鼻アレルギー診療ガイドライン2024(鼻炎の分類と考え方)

・MSDマニュアル:非アレルギー性鼻炎(臨床像と治療の概略)

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