緑内障

[No.2632] 緑内障の点眼薬は夜付けるのか?朝付けるのが良いか?

緑内障の点眼薬は夜付けるのか?朝付けるのが良いか?

 清澤のコメント:語りつくされた話題の様でもありますが、緑内障の点眼薬は夜付けるのか?朝付けるのが良いか?という議論があります。それに対する答えが出ていました。キサラタン単剤なら夜。(キサラタン+β遮断薬)配合点眼薬なら朝という京都大学池田華子先生による解説です(日本の眼科 955号(2024 637)。

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ラタノプロスト・チモロール配合剤は朝に点眼すべきか 夜に点眼すべきかランダム化比較試験 Feng H,ほか。 Transl Vis Sci Technol 2024; 13 : 21.

 緑内障に対する治療の基本は眼圧下降であり,多くの場合プロスタグランジンFP2受容体作動薬単剤が第一選択として使用される。単剤での治療効果が不十分な場合,β遮断薬との配合剤に切り替える ことが多い。ラタノプロストはプロスタグランジン F2α誘導体であり,ぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進することによって眼圧を低下させる。 ラタノプロストの効果は,点眼後12時間から24時 間程度が最大になることがわかっている。通常,ラタノプロストは一日一回夜に使用することが推奨されている

一方,β遮断薬であるチモロールは,主に房水産生を抑制することにより眼圧を下降させるとされる。夜間は生理的に房水産生が少ないため,効果的に眼圧を下降させるためには,一日一回点眼 の場合には,朝に点眼をするほうがよいとされている。

それでは,ラタノプロスト・チモロールの配合剤は,朝と夜のどちらに点眼をするのが効果的なの だろうか。著者らは,眼圧変動にも着目し,ラタノプロスト・チモロールの配合剤の朝または夜の投与の効果を比較する二重盲検比較試験を行った。対象は63人,朝投与群に31人,夜投与群に 32 人がランダムに割り当てられた。

ラタノプロス ト・チモロール配合剤の入った点眼瓶Aと涙液点眼の入った点眼瓶Bを用意し,朝投与群では午前8 時にA点眼,午後8時にB点眼を,夜投与群では午前8時にB点眼,午後8時にA点眼を使うように指示した。投与前,および4週間投与後に昼間眼圧は座位で,夜間眼圧は仰 臥位にて,アイケアプロ®を用いて眼圧を測定した。

 最終的に,朝投与群27人,夜投与群29人が解析対象となった。いずれの群でも,投与により各測定時刻において有意な眼圧下降が得られた。眼圧下降量は,午前930,午前1130,午後130,午後 330,午後730では,夜投与群において朝投与 群より大きい,つまり眼圧がより低い結果となった。

 ベースライン眼圧を加味した線形混合効果モデルを使用した解析では,午前930において,夜投与群の眼圧下降量が朝投与群よりも有意に大きかった。(夕方投与群:4.01± 2.62 mmHg, 朝投与群:2.42 ±3.23mmHgP= 0.048)。しかし,ピーク眼圧値およびトラフ眼圧値に関しては、両群間で有意な差は見られなかった。

次に著者らは,眼圧変動に着目し,眼圧変動量 (ピーク眼圧トラフ眼圧),および眼圧変動の平均 振幅(meanamplitudeofIOPexcursionMAPE)を検討した。治療前と比べると,治療後では両群ともに眼圧変動が減少していた。また,朝投与群では,一日,昼間,夜間に関わらず,眼圧変動がより小さくなった。

 以上より,著者らは,ラタノプロスト・チモロー ル配合剤は,夜投与のほうが,午前930での眼圧下降効果が大きいものの,特に昼間の眼圧変動抑制に関しては,朝投与のほうが優れており,眼圧安定性の観点からは,朝投与のほうが良い可能性がある,と結論づけている。

 

1)  日本におけるラタノプロスト・チモロール(ザ ラカム )の承認時の臨床試験では,朝投与,および夜投与の試験が含まれており,ともに対照群と 比べた眼圧下降の有意性が示されている。投与時 間に関する比較試験は含まれていない。 :此の治験には南砂清澤眼科も参加したと思うのですが、私もそこまでは考えていなかった。

 [文献] 1) ZhaiR,etal.Meanamplitudeof intraocularpressureexcursions:anewassessment parameterfor24-hpressurefluctuationsinglaucoma patients.Eye (Lond) 2021;35:326-333.

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